保育士足りず認可園休園へ 九州初、待機児童解消に逆行 福岡市

保育士不足により来年4月の休園が決まったたちばな保育園=27日、福岡市南区
保育士不足により来年4月の休園が決まったたちばな保育園=27日、福岡市南区
写真を見る

 福岡市南区の認可保育所が必要な保育士を確保できないとして、来年4月からの休園を決めたことが分かった。在園児33人が転園を余儀なくされており、市は転園先の確保を支援する。保育士不足が原因の休園は九州で初めてとみられ、厚生労働省によると全国的にも極めて異例。政府は28日、子育て支援の目玉政策として幼児教育・保育の無償化を来年10月から始めると正式決定したが、保育需要はさらに高まるとみられ、保育士の確保が伴わなければ、待機児童解消にはつながらない可能性がある。

 休園するのは1979年設立の「たちばな保育園」。園は11月、「保育士を思うように確保できない」などと市に相談。市は人材派遣会社の活用などの対応策を提案したが、園は今月12日に休園を申し出た。

 市によると同園では近年、保育士が数人ずつ退職。園児数も定員120人を下回り、補助金も減額になる悪循環に陥り、現在は48人の園児に対し保育士数は4人と国の配置基準(1、2歳児6人に保育士1人など)ぎりぎりの状態だ。1人当たりの業務負担が重いことなどもあり、保育士を集められなかったとみられる。西日本新聞の取材に対し、同園は「考え抜いた末の休園。詳細なコメントは差し控える」と答えた。

 市が2015年度に行った定期監査では、同園は経営の悪化が指摘されていた。保護者の一人は「市はもっと早く手を打てたはずだ」と話す。市は「結果的に在園児が転園を強いられるという痛恨の事態を招いた。今後、指導監査の在り方を見直したい」とし、同園については他の法人への事業譲渡も視野に検討するとしている。

 来春の卒園児を除く1~4歳の33人は、転園先の確保が喫緊の課題となるが、認可保育所の4月入所希望者の1次選考申し込みは既に締め切られていたため、市は33人については申し込みを今月25日まで延長。加えて、周辺の保育施設にできる限りの受け入れも要請していくとした。

 市は待機児童の解消を目指し、保育所定員を毎年2千人規模で増やしている。ただ、賃金や業務負担の問題は深刻で、市は正規保育士を対象に月額上限1万円を家賃補助する待遇改善策を導入しているが、市内の保育士養成機関を卒業した有資格者が市内の保育所に就職する割合は45%程度にとどまっている。

 民間アンケートでは、無償化されれば保育利用の申し込みが増え、業務の増加が懸念されることから、保育士と幼稚園教諭の7割近くが「反対」と回答。保育士の確保や待遇改善を同時に進める必要性が指摘されている。

   ◇    ◇

待遇の改善急務

 西南女学院大短期大学部の阿南寿美子准教授(幼児教育)の話 保育士希望者は売り手市場で、より働きやすい就職先を選べる時代。保育施設が急増する中、保育士が集まらず休園するケースは他にも起こりうる。幼児教育無償化や施設整備よりも、むしろ保育士の待遇と職場環境の向上が急務だ。行政には保育所の経営や採用方法にまで踏み込んで指導する権限はないが、共同して経営改善を目指す姿勢を持ってほしい。まずは運営者が気軽に相談できるような仕組みを作ることが重要だ。

=2018/12/29付 西日本新聞朝刊=

西日本新聞のイチオシ [PR]

西日本新聞のイチオシ [PR]