軍艦島に“違反”釣り人 上陸制限の世界遺産 長崎市は対応に苦慮

軍艦島で糸を垂らし魚を狙う釣り客たち。護岸上などに5人の姿が確認できた=22日午前11時ごろ
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 世界文化遺産「明治日本の産業革命遺産」を構成する「軍艦島」として知られる長崎市の端島で、市条例が島内への立ち入りを原則禁止し、見学は一部区域での認可ツアー客などに限定しているにもかかわらず、多くの釣り客が護岸から魚を狙う“違反状態”が続いている。市は長年、瀬渡し船を黙認していた事情もあり、対応に苦慮している。

 市によると、2005年の旧長崎県高島町との合併で、同町所在の軍艦島を市有財産として管理するようになった。無人島になった当初から「上陸禁止」が周知されていたが、市は09年施行の条例で、資産の保存・保護が優先される世界遺産への登録(決定は15年)を見据え、「見学施設」として整備した歩道、広場以外の区域への立ち入り禁止を定めた。

 一方で、島は炭鉱で栄えた時代からメジナやマダイの好釣り場でもある。週末の22日午前、海上からは護岸上や桟橋跡などで釣り客約10人を確認できた。同市内から1隻の瀬渡し船が出ており、船長の男性(58)によると、年末年始など多い日には約30人が利用する日も。1人4千円(往復)で「年間数千人を運んでいる」。22日は海面から約10メートルの高さの護岸に数人が並んで立ち、糸を垂れている場所もあった。

 なぜ、世界遺産で釣りが容認されているのか。市によると、05年に市有財産となって以降も「護岸の管理者は長崎県と誤解していた」(財産活用課)ため、定着していた釣り客の存在を「所管外」とし、事実上傍観してきたという。

 市は世界遺産登録を機に、軍艦島の「廃虚」を守る護岸についても、市に管理責任があると気付いた。このため、市は従来の「黙認」姿勢を見直し、15年7月に釣り客を上陸させないよう船長に要請したが、拒否されたまま協議は膠着(こうちゃく)状態にあるという。

 船長は取材に対し「父親の代から40年以上、瀬渡しを続けている。収入の7割がこの仕事で、辞めるのは納得できない」と説明。市は「護岸での釣りは罰則はないが条例違反。今後も釣り客を運ばないようお願いしていく」(同課)としている。

 端島(軍艦島) 長崎港の南西約18キロに位置し、岩礁の周囲を埋め立ててできた面積約6・5ヘクタールの人工島。その外観から「軍艦島」と呼ばれる。1890年に三菱が海底炭鉱として採炭を始め、最盛期の1960年には約5300人が暮らした。74年の閉山後は無人島に。世界文化遺産「明治日本の産業革命遺産」の構成資産の一つ。長崎市は30カ年計画で、建造物や護岸の保全を進める。今年秋の台風25号で見学区域の修復が必要になり、現在は上陸を全面禁止している。再開は来年2月の予定。

=2018/12/31付 西日本新聞朝刊=

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