北九州市、斜面宅地の居住制限へ 市街化区域見直し 人口減、災害 都市再生へ一手

 高齢化や人口減にあえぐ北九州市は、災害発生の危険性もある一部の斜面住宅地について、居住を制限する検討に入った。都市計画区域上の区分を見直し、開発が制限される市街化調整区域に編入する。インフラが整った中心部居住を促すことで、コンパクトシティーを目指す。既に該当地域の選定作業に着手しており、4月以降に住民に説明する方針。住民が居住する地域を対象にした大規模な区分見直しは異例とみられる。

 資産価値への影響も懸念され、住民の間に不安が広がる可能性もあるが、将来的に防災やコミュニティー維持のために必要と判断した。政令市では初めての試みで、人口減少社会における都市再生の踏み込んだ手法として注目される。

 検討のきっかけは昨年7月の西日本豪雨。同市門司区奥田の斜面住宅地で土砂崩れが発生し2人が死亡、市内約400カ所で土砂崩れが起きた。2040年の人口が現在より17%減の78万人となる推計を踏まえ、公共インフラ整備を中心部に集中させる狙いもある。

 現在、市が都市計画区域に指定する約4万8800ヘクタールのうち、42%は住宅などを建築できる市街化区域、残りが山林や農地など開発が制限される市街化調整区域に区分している。

 市は昨年末から人口密度、高齢化率、交通利便性、土砂災害区域の指定状況など34の指標を使って市内全域を分析。それらを点数化し、調整区域に編入すべき地域として門司、八幡東、若松の3区などで5カ所以上を選定した。専門家の意見を聞いて、3月末までにさらに絞り込む。福岡県などとの調整を経て、実現は21年度の見込み。

 編入対象は数百世帯以上とみられる。市によると編入後も居住は続けられ、不動産売買もできるが、市の許可がなければ再開発や建築行為はできず、新規入居は制限される。空き家の整理も含め、対象世帯の支援策が課題になる。一方、調整区域になると都市計画税(市税)は徴収されない。

 調整区域に編入する事例は全国でもあるが、国土交通省都市計画課は「開発が見込まれたが実際は宅地化が進まず、居住実態がない地域を調整区域に見直すケースがほとんどだ」としている。

■「開発ありき」転換 移住、空き家対策課題

 都市計画区域の線引きを見直し、人口減が進む斜面住宅地の居住制限に踏み込む北九州市の取り組みは、開発ありきだった従来の都市政策を大きく転換する意味がある。住民が一定規模暮らす中だけに、分かりやすい編入のルール作りや丁寧な支援策が課題となる。

 市街化区域から、開発が制限される調整区域への編入対象となる地域の多くは、災害発生の可能性が高かったり、道路や建物の老朽化が著しかったりする地域とみられる。すぐに移住を迫られるわけではないが、不動産価値の下落を招く恐れなどがあり、住民の理解と協力が欠かせない。

 人口約8万人の京都府舞鶴市も2017年から、調整区域への編入議論を始めた。かつて開発を期待して農地を市街化区域としたが、宅地化が進まなかった地域が対象だ。舞鶴市の担当者は「調整区域だと税金が安くなることから、地権者の関心は高い」。既に10回ほど説明会を開いた地域があるなど、丁寧な対応を目指しているという。

 一方、北九州市の場合、住民が居住する地域が対象となる。まずは対象に含まれる可能性がある地域から抽出した住民約千人へのアンケートを予定。家屋活用の意向などを確認し、中心部移住や空き家の整理に対する補助といった支援策を具体化するとしている。

 北九州市の担当者は「さまざまな意見が出ることは覚悟している。人口減、高齢化に加え、老朽化した住宅が土砂崩れなどに襲われる将来の危険性を考えると、避けて通れない」としている。

【ワードBOX】市街化区域と市街化調整区域

 都市計画法に基づき、街を二つの区域に区分けし、公共投資の集中など計画的に街づくりを進める仕組み。市街化区域は既に市街地を形成しているか、優先的に市街化する区域と定義され、調整区域は山林や農地が大半。市街化区域を調整区域に再編入することは「逆線引き」と呼ばれる。斜面住宅地を抱える長崎市が過去に実施した事例はあるが、住民が居住していない地域が対象だった。

=2019/01/01付 西日本新聞朝刊=

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