薄い危機感…人口減加速の市町村 定住支援策乱立、人「奪い合い」 地域間格差が拡大へ

 2015年までの15年間で人口減が加速した九州の市町村。都市部への流出など避けられない事情はあるにせよ、背景に透けて見えるのは人口問題に対する危機感の薄さだった。その後の国の旗振りにより、各市町村は移住定住策に本腰を入れ始めたものの、今度は類似の対策が乱立。力の残っている地域に人が流れるいわば人の「奪い合い」の時代に突入し、地域間格差が広がる事態に陥っている。

 「移住定住策といえるようなものは特にありませんでした」。佐賀県基山町の担当者は、2000年代の町の状況をこう振り返る。

 福岡市のベッドタウンとして新興住宅地が1980年代から次々と整備され、人を呼び込んできた。こうした傾向から国立社会保障・人口問題研究所(社人研)は00年からの5年間で人口約1万9千人から約2千人増えると推計していたが、逆に約1万7500人に減少。働き盛りだった世代が高齢化し、子どもたちが進学や就職で町を去る傾向に歯止めがかけられなかったことが要因だ。

 鹿児島県大和村は15年の人口が00年から3割近く減り、社人研の推計を下回った。担当者も「対策にかなり力を入れるようになったのはここ5年」と話し、人口減対策が後手に回ってしまったことを認める。

 こうした地方に人口減対策を促すため、国は16年度までに各市町村に人口の数値目標と地方創生総合戦略の策定を求めた。トカラ列島の離島にある同県十島村は09年、人口が初めて600人を割り込んだ危機感から、移住者向けの奨励金制度(最大で単身者に月21万円、家族連れに同30万円を支給)をいち早く始めたことが奏功し、15年に756人まで回復した。ただ、類似の制度を導入する市町村は増えており、担当者は「他地域との人の奪い合いが激化しており、人口を確保するのは容易ではない」と漏らす。

 18年1月1日時点の住民基本台帳に基づく人口動態調査によると、前年比で人口が増えたのは東京、愛知など6都県のみで、九州7県はいずれも減少。大都市と地方の不均衡は年々、深刻さを増している。福岡大の磯田則彦教授(人口移動論)は「国と県が連携し、地方の高等教育を充実させ、就業の受け皿を増やすなど東京への集中を食い止める対策が必要。望む人が結婚、子育てをしやすい環境も社会全体で整えるべきだ。いったん転出すると増やすのは困難であり、人口減に歯止めがかからなくなる」と語る。

=2019/01/03付 西日本新聞朝刊=

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