統計補正の経緯に謎 担当室長、事前に上振れ認識 「賃金偽装」ぬぐえぬ疑念

 厚生労働省の毎月勤労統計の不正調査問題で、本来の調査手法に近づける数値補正が昨年1月にひそかに行われた経緯に注目が集まっている。厚労省が事前の試算で、補正の影響で賃金上昇率が「0・2ポイント程度」上振れすると予想していたためだ。厚労省は意図的に上振れの要因を説明せず、単にアベノミクスの成果で賃金が上昇したように見せ掛けたのではないか-。野党は「賃金偽装」の疑いで政府を追及する構えで、衆院予算委員会に舞台を移す週明けからの国会論戦の焦点になりそうだ。

 東京都内の従業員500人以上の事業所について、全数調査するべきところを抽出調査にしていた不正は2004年に始まった。全数調査した場合に近づける補正は昨年1月から。厚労省の特別監察委員会の報告書によると、同時に別の調査手法変更が予定されていたことから、これに合わせて補正も行うよう担当室長がシステム改修を部下に指示した。

 厚労省によると、補正による賃金上昇率の上振れが予想されたため、省内で事前に影響を試算。上振れ幅は「0・2ポイント程度」との結果が出たが、室長は公表や上司への報告を怠った。調べに対し、当時の室長は「誤差の範囲内だと思った」と釈明。監察委の報告書はこうした経緯を追認し「隠蔽(いんぺい)の意図は認められない」と結論付けている。

 だが、この説明には不可解な点がある。

 補正の影響を試算した17年時点で、出そろっていた16年の賃金上昇率は0・5%だった。大和総研エコノミストの小林俊介氏は「上昇率が1%に満たない中で『0・2』は大きい」と指摘。無視しがたい試算結果を「誤差の範囲」と受け止めたという当時の室長の説明は、不自然さを残す。

 野党からは「不正を知りながら補正を公表しなかったのは隠蔽にほかならない。アベノミクス偽装だ」との批判が噴出。「不正を隠し続けるため、補正も伏せたのではないか」とも疑いの目が向けられる。今後の国会審議で、補正の事実を公表しなかった経緯が焦点になるのは確実だ。

 「隠蔽」「忖度(そんたく)」はあったのか。監察委による調査は聴取の大半を身内の同省職員がしていたことなどが発覚、全面的なやり直しを迫られているが、新たな証言を得られるかは見通せない。根本匠厚労相も「事実ははっきりしている」などと再検証には及び腰だ。

 不祥事対応に詳しい同志社大の太田肇教授(組織論)は「厚労省は統計の重要性に対する認識が薄く、一連の対応からは隠蔽体質を感じる。再発防止には第三者による調査が必要だ。補正の経緯も徹底的に解明すべきだ」と強調する。

=2019/02/03付 西日本新聞朝刊=

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