原発事故8年 傷癒えぬ福島 被災者証言映画3月公開 佐賀出身・土井監督、語りで現実伝える

ドキュメンタリー映画「福島は語る」の一場面。避難先で亡くなった息子のことを思い返す男性(C)DOI Toshikuni
ドキュメンタリー映画「福島は語る」の一場面。避難先で亡くなった息子のことを思い返す男性(C)DOI Toshikuni
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「今の日本の国民は他者の痛みを想像する力を失っているのではないか」と問う土井敏邦監督(C)慶田久幸
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「福島は語る」のポスター
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 東京電力福島第1原発事故の被災者14人の証言を集めた、土井敏邦監督(佐賀県出身)のドキュメンタリー映画「福島は語る」が事故から8年を迎える3月、福岡、佐賀両市など全国12の映画館で一斉公開される。未曽有の事故であっても風化はいや応なく進む。映像に映し出された表情や言葉の多くは、積み重なった歳月が被災者を逆に追い詰め、再生が容易ではない現実を突き付けている。

避難、困窮 離れる家族の心

 映画製作のきっかけは2014年春、東電幹部の刑事責任を追及する福島原発告訴団の集会だった。土井監督は、参加者の証言に心を動かされ取材を始めた。4年かけて約100人の話を聞き、被災者14人を選んで2時間50分にまとめた。人々の語りだけで原発事故の恐怖を伝えた、ノーベル文学賞受賞作家スベトラーナ・アレクシエービッチ著「チェルノブイリの祈り」に触発され、大半をインタビュー映像で仕上げた。

 心の奥の傷を吐露する14人の証言は「時が癒やす」という想像すら打ち破る本音が凝縮されている。

 母子避難した女性は「子の健康を願う覚悟を夫は分からない」と離婚の危機を語り、顔を覆う。別の避難者は、福島に残った人との関係悪化を悲しむ。

 首都圏の自助団体の女性は、経済苦から働きづめで病気になり、子どもと避難した自らの決断を責める母親の声を代弁する。「子に『みんなとばらばらになったのはお母さんのせいだ』と言われたら」

 行政の住宅提供の打ち切りなどが不安な思いに追い打ちを掛ける。日増しに状況が悪化し自死者も出る「その後」があらわになる。

 避難先の生活に慣れた頃、主婦は新たな友人から「毎月(慰謝料)10万円もらってる? 私たちの税金から出てるんでしょう」と言われ、傷ついた。「こたえましたね。今でも悔しい」と涙が止まらない。

 福島県双葉町から避難先の小学校に転校した女子児童を見守る教師は語る。「親友と思ってる子が豹変(ひょうへん)して“放射能”と言ってきたり、親の車にいたずらされたり…」。児童は、故郷を秘密にする処世術をいつの間にか身に付けたという。

人生閉じた息子の“覚悟”

 同県飯舘村で苦労して立ち上げた石材加工会社が軌道に乗り、後継の息子も手伝い始めて間もない頃に被災した男性。別の避難先で1人暮らししていた息子の遺体発見時の様子を静かに語り始める。

 「(息子は)部屋の中をきれーいに、ごみひとつない状態で片付けて、横になってた、っていうのは、誰にも言ってないですよ。あっ、覚悟の上だな、っていうふうに、私は見た瞬間分かりましたね」

 「こんな狂った人生になっとは、夢にも思わなかった。思わなかった。いままで涙流した時、ねえ(ない)。息子亡くなった後、がまんしていた。がまんしていた」

 弱音は吐けないと封印していたという、心の奥底からの叫びが涙とともにあふれ出す。土井監督は「これまで撮ったことのないようなシーンだった。(男性が)語らずにはいられないタイミングに遭遇した」と振り返る。

「『生きる指針』奪われた心の傷、言葉で可視化」

 全国が東京五輪ムードに浮き立つ中、復興ぶりが伝えられ、一見平穏に戻ったかに見える福島。しかし、ひたすらに続く14人の声が連なる先に、その内実がはっきりと像を結んで迫ってくる。分かったつもりでいた鑑賞者に、旧来の理解の浅薄さを感じさせるような力が作品には宿る。

 「原発事故で人生を狂わされ、夢や未来を奪われ、家族や共同体の絆を断ち切られ、『生きる指針』さえ奪われた心の傷はなおうずいている。被災者の言葉でそれを可視化し、事故を忘れつつある社会に届けたかった」。土井監督の言葉には事故を終わったことにしたい「政治」への強い怒りも込められている。

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 佐賀市のシアターシエマは3月8~14日、福岡市のKBCシネマは同11、14の両日に上映予定。

 ▼どい・としくに 1953年、佐賀県牛津町(現小城市)生まれ。ジャーナリスト。ドキュメンタリー映画の代表作は、4部作「届かぬ声-パレスチナ・占領と生きる人びと」の第4部「沈黙を破る」▽「飯舘村 放射能と帰村」など。

=2019/02/19付 西日本新聞夕刊=

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