【動画あり】ゴカイだらけ 神秘の夜 観察会 人気じわり 鹿児島の海岸

観察会で採捕したヤマトカワゴカイを水槽などに移す浜本麦さん(左)ら
観察会で採捕したヤマトカワゴカイを水槽などに移す浜本麦さん(左)ら
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生殖群泳するヤマトカワゴカイ=8日午後9時ごろ、鹿児島県姶良市
生殖群泳するヤマトカワゴカイ=8日午後9時ごろ、鹿児島県姶良市
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観察会の参加者にゴカイの生態などについて熱心に語る浜本麦さん
観察会の参加者にゴカイの生態などについて熱心に語る浜本麦さん
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 釣りの餌として重宝されるが、ウネウネしてちょっと苦手…。そんなイメージのゴカイのとある行動が、ひそかな注目を集めている。春先、大潮で満潮時の夜にだけ、命をつなぐために河口付近を群れで遊泳する「生殖群泳」。鹿児島県姶良市では、「ゴカイの専門講師」による全国唯一をうたう観察会が開かれている。

【動画】鹿児島県姶良市であったゴカイの生殖群泳観察会

 「きれいな緑色は卵のある雌、ピンク色は雄です。この子は大っきいね」。8日午後9時ごろ、対岸の桜島もすっかり見えなくなった重富海岸=同市=にある用水路で、今年2回目の観察会が催された。錦江湾の環境学習などに取り組むNPO法人「くすの木自然館」の浜本麦(ばく)専門研究員(36)が、膝まで水に漬かりながら説明する。

 観察するのは、青森から台湾に至る範囲で生息が確認され、「オーソドックスで最も身近なザ・ゴカイ」(浜本さん)というヤマトカワゴカイ。この時季になると川底から現れ、雄雌それぞれが精子と卵を水中に放出しながら群泳し、子孫を残す。

 この日の用水路では、光に寄ってきた体長20~30センチの約60匹が、水面近くで体をくねらせている。多い時は千匹にもなるという。参加者7人のうち、女性は4人。浜本さんが採捕し、水槽に移したゴカイを間近で眺めたり、手のひらに乗せたりしていた。サワサワと筆でなぞられるような感触だそうだ。

 初めて参加した鹿児島市の女性(31)は「釣りやキャンプが好きで海に興味があって来ました。ゴカイを気持ち悪いと思ってたけど、一生懸命次の世代を残そうとしている姿は神秘的でした」としみじみ。「もっと数が多い時も見てみたい」と興味を募らせた。

 ヤマトカワゴカイは普段、淡水と海水が混じり合う汽水域の底に巣穴を作り、砂や水の中の有機物を食べる。体長は約15センチで寿命は1年。最後の2カ月ほどをかけて、四つある目を大きくし、弛緩(しかん)して長くなった体を精子や卵で満たすなど、体の形を変える変態を行うという。

 生殖群泳を見せるのは一生の最期だけ。全国各地で見ることができ、釣り人の間では「バチ抜け」と呼ばれる。水中に出てきたゴカイを捕食するシーバス(スズキ)が釣りやすい時季として人気がある。

 浜本さんは、鹿児島大理学部在学中にゴカイ研究に目覚めた。卒業論文のテーマは「ゴカイの生殖行動」。「真夜中のランデブー」と名付けた観察会は、同NPO法人就職後に始めて13年になる。県外からの参加やキャンセル待ちの時もあり、若い女性の申し込みも増えているという。

 観察会ではまずNPO法人が管理する展示施設「なぎさミュージアム」で授業を実施。妻手作りのヤマトカワゴカイを模した帽子をかぶって生態に関するクイズを出す浜本さんの姿は、魚類学者でタレントのさかなクンのように研究対象への愛に満ちている。

 「ゴカイは生きているだけで砂や水をきれいにし、魚に食べられることで皆さんの食卓も支えているんです。一般の人がゴカイを身近に感じることが、川や海、干潟の環境を守ることにつながるはず」

 観察会は21~23日にも実施。参加料千円(保険料込み、22日のみ別料金)で定員15人。問い合わせはくすの木自然館=0995(67)6042。

=2019/03/16付 西日本新聞夕刊=

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