双子操縦士、熊本地震乗り越え空へ 安達航大さん雄大さん、訓練生内定 崇城大養成課程を卒業「復興した姿見守る」

訓練機を背に笑顔の安達航大さん(左)と雄大さん=19日、熊本県菊陽町
訓練機を背に笑顔の安達航大さん(左)と雄大さん=19日、熊本県菊陽町
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 全国でも珍しいパイロット養成コースがある崇城大(熊本市西区)で20日、工学部宇宙航空システム工学科4年の安達航大さん(22)と双子の弟雄大さん(22)が卒業を迎えた。2人は2016年4月の熊本地震で被災、授業の中断なども経験しながら、全日本空輸(ANA)と日本航空(JAL)にそれぞれ訓練生として内定した。大切なことを教えてくれた熊本の復興を上空から見守ろうと、新たな大空へと旅立つ。

 2人は茨城県つくばみらい市出身。幼い頃から父と羽田空港(東京)近くの公園に出掛けて飛行機を眺め、パイロットに憧れた。そして、遠く離れた熊本の地で夢を目指した。

 熊本地震では未明の本震で、忘れられない経験をした。

 突然突き上げられるような大きな揺れ。パジャマ姿のままアパートを飛び出すと、倒壊しそうな家の前で動転した様子の高齢男性が目に留まった。「寝たきりの妻が出てこられない」

 航大さんは「体が勝手に動き」、民家に入った。体がふらつくほどの強い余震。瓦の割れる音が聞こえ、恐怖で震えた。「おばあちゃん、おばあちゃん!」。叫びながら、物がなぎ倒された室内を進んだ。

 兄を見送った雄大さんは、何度も家に入ろうとする男性の手を握り「おばあちゃんは助けにいったからね」と励まし続けた。内心は、不安でいっぱいだった。

 10分ほど後、女性を抱えた航大さんが出てきた。「ありがとう、ありがとう」。妻を抱きしめて、感謝の言葉を繰り返す男性。みんな無事で良かったと、2人は胸をなで下ろした。

 地震で大学は休校になり、翌日、着の身着のまま福岡空港から茨城に帰った。戻ったのは約1カ月後。飛行機から熊本の地を見た。ブルーシート、土砂崩れ…。見慣れた光景が失われ、胸が痛くなった。

 プレハブの仮設校舎や格納庫で授業が再開した。飛行訓練では、傷ついた街並みが少しずつ復旧する様子を空から見た。

 「当たり前に授業を受けていたのが、そうじゃないと気付かされた」と航大さん。雄大さんも「飛行機はいろんな人やその思いを乗せて運ぶ。地震の翌日、僕らが不安を抱えたままパジャマ姿で乗ったように、被災者も。大切なことを学んだ」と語る。

 「熊本は第二の故郷。いつか復興を遂げた熊本を空から眺めたい」。2人は笑顔で青空を見上げた。

=2019/03/21付 西日本新聞朝刊=

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