【ひと】長崎原爆資料館長を退任する作家 青来有一さん

青来有一さん
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 長崎市役所を3月末で定年退職するのに伴い、9年務めた長崎原爆資料館長を退く。「長崎が考える問題には普遍性があり、世界の動きを肌で感じる日々だった」。核廃絶を唱えたオバマ前米大統領の登場や、国連での核兵器禁止条約採択に勇気づけられながら、被爆地・長崎から平和の尊さを発信してきた。

 長崎市で生まれ育ち、「地元を離れずに生活できる」と市役所に就職。商工課で商店街振興に努めたり、文化課で遺跡の発掘調査を手伝ったりして「出会った人々を小説に投影してきた」。2001年に「聖水」で芥川賞を受賞し、著名作家に。公務員である以上は「職業ではなく、生き方としての作家を選ぶ」と心に決め、仕事に支障がある新聞連載などは控えた。

 05年、平和推進室長として初めて平和行政に携わった。両親は被爆者。自身は城山小から長崎大まで爆心地の3キロ以内で学んだ。「作家として、ここで書くなら」-。爆心地周辺に暮らす人々の日常を描いた短編集「爆心」を発表するなど、市職員として作家として、長崎の平和を語る上で欠かせない存在となった。

 退職後は作家業に専念する。トランプ米大統領を登場させた昨年の小説「フェイクコメディ」で一端を見せたように「公務員の立場では書きづらかったテーマに挑戦したい」。一方で4月からは長崎大核兵器廃絶研究センター(RECNA)の客員教授に就く。原爆文学をテーマにした市民講座を予定しており「被爆地である長崎大で学ぶことの意味を伝えたい」と語る。

 本名は中村明俊。長崎市在住の60歳。

=2019/03/23付 西日本新聞朝刊=

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