さよならの前に「福ビル探検」 斬新!デラックス!お宝が随所に 天神の“顔”57年の歴史に幕

57年余の歴史に幕を閉じる福岡ビル。完成当時は斬新な建物だった
57年余の歴史に幕を閉じる福岡ビル。完成当時は斬新な建物だった
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ビル外側の柱で化粧板の厚みを測る市原猛志さん
ビル外側の柱で化粧板の厚みを測る市原猛志さん
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福ビル起工式の様子。やぐらの各段の右下に階数を書いた幕が張られている=1958年8月3日(西鉄提供)
福ビル起工式の様子。やぐらの各段の右下に階数を書いた幕が張られている=1958年8月3日(西鉄提供)
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階段室を検証する益田啓一郎さん
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福ビル屋上からの風景。天神ビブレ、イムズ、天神コアが並んだ風景が見られる時間も残り少ない
福ビル屋上からの風景。天神ビブレ、イムズ、天神コアが並んだ風景が見られる時間も残り少ない
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福ビル1階で開かれているパネル展
福ビル1階で開かれているパネル展
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 再開発に伴い、4月上旬に57年余りの歴史に幕を下ろす福岡市・天神の「福岡ビル」(福ビル)。銀色の建物は市民に親しまれてきたが、内装などのハード面や店舗などのソフト面も、完成当時の表現を借りれば「デラックス」で画期的な街のシンボルだった。産業考古学会理事の市原猛志さん、郷土史研究家の益田啓一郎さん、劇団「ギンギラ太陽’S」主宰の大塚ムネトさんと一緒にビルを“探検”した。

 「なんといっても外観のカーテンウオールとメタルパンチング。当時の福岡ではかなり斬新でした」と話すのは市原さん。カーテンウオールとは柱を建物内側に配置し窓を広く取る構造。当時の福岡都心の大規模建築物は軒並み、窓が外壁に囲まれた重厚な造りだ。

 金属板を加工して外壁板に仕上げるメタルパンチングも、1961年の完成当時は目立った。「福岡では最初期の大規模なモダニズム建築」(市原さん)。ただ、当時の本紙記事には〈「弁当箱みたいで安っぽい」という声〉(同年10月13日付)との記述も…。それだけ斬新で注目が集まったということなのだろう。

 「これは…」。玄関近くで市原さんが驚きの声を上げた。柱に施された御影石の化粧板の厚みは14センチもある。「普通は3センチもあれば十分なのですが…今では考えられない豪華さですね」

 地下駐車場のスロープはアスファルトではなく、アーチ状に並べられた花こう岩の石畳。市原さんは「手作業でないとできない、とにかく手間が掛かる作業。石はアスファルトより強度があり、滑り止めとしての役割が期待されたのでしょう」。一般客向けのビル地下駐車場も福ビルが福岡初だったという。

   ◇    ◇

 福ビルを所有する西日本鉄道の社史編さんにも携わった益田さんによると、西鉄本社の引っ越し作業の中で、ビル建設前後の現場や周辺の写真が200枚ほど見つかった。福岡の街に関する膨大な資料を持つ益田さんでさえ、「こんなものは見たことがないですよ」と慌てるお宝が続々と見つかったという。

 中でも貴重な1枚は、福ビル起工式があった58年8月3日の光景。現場に立つやぐらをよく見ると「2階」「10階」など、各段に小さな幕が張られている。「このぐらいの高さになる、ということを視覚的に見せるためのようです」と益田さん。国旗とこいのぼりを掲げるにぎにぎしさに、「福岡を代表するビルを建てる」という熱気が伝わる。

 福ビルはソフト面でも時代の「最先端」を走っていた。当初から入居している大賀薬局は調剤だけではなく菓子や雑貨を並べ、化粧品を販売。「日本初のドラッグストア業態が、ここで生まれたんです」と益田さん。さらに「レストランのロイヤルが福ビル出店を機に導入したのが、日本初のセントラルキッチン(集中調理施設)方式でした」。

   ◇    ◇   

 屋上の芝生は陽光を浴びて伸びていた。150万都市のど真ん中にあるビルにしては低く感じる39・4メートル。昨年10月上旬までビアガーデンが営業していた。今は幾つかの樹脂製のテーブルや鉢植えの花が静かに、残された時間を過ごす。

 南に目をやれば、天神ビブレ、天神コアの屋上看板の向こうにイムズが見える。福ビルだけではなく、コアもイムズも大規模再開発「天神ビッグバン」に伴い解体される運命にある。

 福岡都心のビルを擬人化した芝居を演じる大塚さんはつぶやいた。「天神は新しい街になっていくんですね。貴重な眺めですね」-。福岡のにぎわいを支えてきた福ビル。ありがとう、そしてお疲れさまでした。


 ◆歩みたどるパネル展 最終日にはトークショー

 福ビルでは31日まで、ビルの完成から現在、そして天神ビッグバンに至る歩みを振り返るイベント「福ビル 思い出交差展」が開催中。1階でビルの歴史を振り返るパネルを展示、開業前後の本紙の記事や全面広告も紹介している。31日午後2時からは、市原猛志さんと益田啓一郎さんによるトークショー「まち×福ビル」を開催する。入場無料。西鉄お客さまセンター=(0570)001010。

=2019/03/26付 西日本新聞夕刊=

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