松橋事件、再審制度に一石 証拠開示規定なし/検察抗告で長期化 28日に地裁判決

 1985年に熊本県松橋(まつばせ)町(現宇城市)で男性が殺害された松橋事件で、殺人罪などで服役した宮田浩喜さん(85)の裁判をやり直した再審の判決が28日、熊本地裁(溝国禎久裁判長)で言い渡される。殺人罪について検察側は有罪立証をしておらず、無罪となる見通し。事件は証拠開示の在り方や検察官抗告による審理の長期化など再審制度の課題を改めて突きつけた。

 松橋事件の再審開始を決定付けた大きな要因は、97年に弁護団が検察に求めた証拠開示で見つかった「巻き付け布」だった。宮田さんが捜査段階で「犯行後に燃やした」と供述したはずの布。虚偽の自白だったことが明らかになり、検察側の証拠隠しが指摘された。

 熊本地裁は2016年、この巻き付け布と、小刀と傷口が一致しないとする法医学者の鑑定書を新証拠と認め「自白の信用性が揺らいだ」として再審開始を決定。高裁、最高裁も支持し昨年10月に確定した。

 1967年に茨城県で男性が殺害された「布川事件」の再審請求審でも、取り調べ時の録音テープや、有罪を支えた目撃証言を否定する別の証言などが新たに開示されたことで再審開始につながるなど、「隠された証拠」が再審の鍵を握る事例は少なくない。

 通常審では裁判員制度導入に伴って公判前整理手続きでの一定の証拠開示が進み、2016年の刑事訴訟法改正では証拠のリストを示す制度も新たに盛り込まれた。しかし再審請求審に関しては規定がない。

 1979年に鹿児島県大崎町で男性の遺体が見つかった「大崎事件」弁護団の鴨志田祐美弁護士は「検察は無罪方向の証拠を隠す可能性がある。再審請求審についても証拠開示の法制化が必要だ」と訴える。

 大崎事件では3次にわたる再審請求で計3度の再審開始決定が出たが、いずれも検察側が抗告。現在は最高裁で審理が続く。松橋事件でも地裁、高裁の開始決定に検察側が抗告した。

 鴨志田弁護士は「検察官抗告は審理を長引かせる『再審妨害』。抗告によって無辜(むこ)の救済が遅れることは許されず、抗告は制限するべきだ」と話す。

 松橋事件の再審初公判は、地裁が有罪認定につながる証拠を不採用とし、即日結審という異例のスピード審理だった。弁護団も「宮田さんに一日も早く無罪判決を届けたい」と語る。判決では裁判所が「誤判原因」について言及するのかも注目される。

=2019/03/27付 西日本新聞朝刊=

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