結婚60年目、妻を奪った地震…「ふるさと再建の役に」遺族の決意 熊本で追悼式

熊本地震犠牲者追悼式で、遺族代表あいさつに臨む増田敬典さん=14日午前10時15分、熊本県庁
熊本地震犠牲者追悼式で、遺族代表あいさつに臨む増田敬典さん=14日午前10時15分、熊本県庁
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 「泣いてばかりはいられない」-。熊本地震犠牲者の遺族75人が参列した14日の熊本県庁での追悼式。仮設住宅などでそれぞれの3年を過ごした遺族たちは、最愛の人を振り返るとともに、復興や生活再建に向けて決意を新たにした。

 「暗い闇の中、消防団の懸命の救助活動により、妻は全壊した自宅の下から救い出されました。しかし、もう息を吹き返すことはありませんでした」

 遺族代表の増田敬典さんは祭壇を前に、あの日のつらい記憶を呼び起こした。

 2016年4月16日午前1時25分。大きな揺れが自宅を壊し、妻フミヨさんを奪った。結婚して60年目。中学時代に一緒に下校した1学年上の“姉さん女房”だった。

 本当なら、自宅にはいないはずだった。15日から孫娘の東京大合格を祝うため上京するのを夫婦で楽しみにしていた。だが、14日夜に前震が発生。空港に行ったが飛行機が飛ばず、自宅に引き返していた。

 地震後、東京に住む息子から「一緒に暮らそう」と誘われた。それでも村の仮設住宅へ入居したのは「妻と過ごしてきた私たちの『ふるさと』」だから。慣れない1人暮らし。部屋に七つ飾った妻の遺影に語りかけ、胸のうつろを埋めた。

 今月末にようやく自宅再建が始まる。「自立した生活を送り、少しでも村の再建の役に立ちたい」

 熊本市東区の坂本静也さん(61)は「家を出るのが少しでも違っていたら、と今でも思います」と悔やむ。3年前の14日、三男龍也さん=当時(29)=は仕事から一度帰宅した後、外出先で前震の犠牲となった。

 同県甲佐町の村田祐輔さん(59)は初めて参列した。母睦子さん=当時(82)=が地震後に避難所で体調を崩し、震災関連死に認定された。「(3年は)あっという間だった。何もしてやれず、すまないね」と亡き母を思った。

 長女高田一美さん=当時(62)=を亡くした郷テルミさん(83)は来月、仮設住宅から再建した同県南阿蘇村立野の自宅に戻る。「泣いてばかりではいられない。一美は花が好きだったから新しい家も花でいっぱいにしたい」と語った。

=2019/04/15付 西日本新聞夕刊=

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