再発B型肝炎、患者逆転敗訴 福岡高裁判決 初発が「除斥」起算点

 集団予防接種を原因とするB型肝炎訴訟で、20年以上前に慢性肝炎を発症した後に再発した男性2人が国に損害賠償を求めた訴訟の控訴審判決が15日、福岡高裁であった。山之内紀行裁判長は、賠償請求権が消滅する民法の除斥期間(20年)の起算点は最初の発症時と判断。原告側の訴えを認めた一審福岡地裁判決を取り消し、請求を棄却した。原告側は上告する方針。

 弁護団によると、同様の争点に関する高裁判決は初めて。同じ立場の原告は全国13地裁に約90人おり、今後の裁判にも影響を与えそうだ。

 原告は福岡市の元公務員平野裕之さん(60)と福岡県内の60代男性。それぞれ1987年と91年に発症し、一時症状が治まった後、平野さんは2007年に、60代男性は04年に再発。提訴時は最初の発症から20年以上が経過していた。

 原告側は再発時が起算点だと主張し、各1250万円を国に請求。17年12月の一審判決は「再発により質的に異なる新たな損害が生じた」として原告側の訴えを認めた。

 控訴審判決で山之内裁判長は、慢性肝炎は好転と悪化を繰り返すことが多く、原告らの再発時には治療水準が改善していた点を踏まえ「質的に異なる損害が生じたとは言えない」と判断。初発時を除斥期間の起算点とするのが相当として「損害賠償の請求権は除斥期間の経過により消滅した」と結論づけた。

 B型肝炎の集団訴訟では11年に国と原告側の基本合意が成立。特別措置法で、発症から提訴まで20年未満の慢性肝炎患者には1250万円、20年以上経過した場合は150万~300万円の給付金を国が支払うと規定された。

 厚生労働省B型肝炎訴訟対策室は「主張が認められたと承知している。今後も集団予防接種による感染被害の対策を推進したい」とコメントした。

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原告ら「冷酷極まりない」

 慢性肝炎の発症から20年以上。投薬や治療に苦しんできた原告らの訴えは、一審判決から一転した司法判断に阻まれた。「冷酷極まりない」「残念でならない」。15日の福岡高裁判決後にあった原告側の記者会見では憤りの声が上がった。

 午後2時すぎ。裁判所の正門前に弁護団が「不当判決」と記された紙を掲げると、関係者からため息が漏れた。九州弁護団の小宮和彦団長は「速やかに最高裁に上告し、判決をひっくり返す」と語気を強めた。

 原告側は最初の発症時よりも再発時の方がより重い症状であり、初発時に将来の損害まで請求することは不可能だと訴えていた。だが、高裁判決は「再発により新たな損害が生じたとは言えず、初発時が除斥期間の起算点」と判断。原告側の請求を認めた一審とは正反対の結論を導いた。

 「本腰を入れて最高裁で闘う」として、実名公表に踏み切った原告の平野裕之さん(60)は「将来の悪化を見越した請求もできず、再発後の訴えも認められない。裁判所には失望した」と声を落とした。

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 九州弁護団は16日午前10時~午後4時、B型肝炎訴訟における無料の電話相談を行う。弁護団事務局=092(883)3345。

=2019/04/16付 西日本新聞朝刊=

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