益城の3年、2万枚写す 地元唯一の写真館・林さん 住民とまち歩き「被災忘れず」

相棒の2台のカメラを持ち、被写体を追う林さん。視線の先には、再建された家や更地になった場所を見て歩く住民たちの姿がある=14日午前、熊本県益城町
相棒の2台のカメラを持ち、被写体を追う林さん。視線の先には、再建された家や更地になった場所を見て歩く住民たちの姿がある=14日午前、熊本県益城町
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本震後、益城町総合体育館の地割れが入った芝生に疲れて横になる住民。林さんが2016年4月16日午後3時50分ごろに撮影した町の姿
本震後、益城町総合体育館の地割れが入った芝生に疲れて横になる住民。林さんが2016年4月16日午後3時50分ごろに撮影した町の姿
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 あの日から3年間、カメラ片手に1人で歩いた町を、この日は住民たちと巡った。歩いているだけなのに心が温かくなった。熊本県益城町で、14日に初めてあったまち歩き。熊本地震直後から町の姿を写し続けてきた町内唯一の写真館「益城カメラ」の林真二さん(60)は、被災の記憶を忘れず、復興の軌跡を地域の人たちと共有したいと、企画に携わった。

 前震の時は、妻と長女の3人で店舗兼自宅にいた。突然のすさまじい揺れ。3軒隣では高齢女性とその息子が倒壊家屋の下敷きになり亡くなった。近くでは女性が取り残され、約6時間後に救助された。

 宮参りや入学、成人式…、人生の節目の写真を任されてきた住民たちが命を落としたり、危険な目に遭ったりした。「この状況を記録しよう」。散乱した機材の中から2台のカメラを取り出し、町に出た。

 未明の本震で自宅は全壊。町にできた「テント村」で避難生活を送り、熊本市のみなし仮設に移ってからも撮り歩いた。ただ、人はあまり写さなかった。「みんな被災者。笑っていても内心つらいから」

 地震から2カ月後、一度は廃業届を出した。だが、店で使っていた業務用プリンターが5時間かかって動きだしたのを見て翻意し、一昨年3月に自宅兼店舗を再建した。

 県が進める土地区画整理事業の区域内に住む。昨年4月、街並みが変わる前にと約300枚を掲載した写真集を自費出版すると、住民から「ありがとう。ご苦労さまでした」。すぐに千部が売り切れ、増刷した。

 まち歩きは、地元まちづくり協議会が企画し、副会長として尽力した。あの日逃げた道、倒壊した家屋、徐々に広がった更地…。この3年、2万枚もの写真を撮りためてきた町を20人の住民と歩き、記憶に刻んだ。

 「写真には力がある。これからも撮り続けたい」。レンズ越しに、前を向く住民の顔。自然にシャッターを切った。

=2019/04/16付 西日本新聞朝刊=

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