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安心した暮らしいつ? 九州豪雨3ヵ月 小野・大鶴地区 消せぬ不安それでも前へ [大分県]

川があふれ田んぼが被害に遭った山本省悟さん
川があふれ田んぼが被害に遭った山本省悟さん
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大規模な土砂崩れで土砂ダムができた日田市小野地区=7月8日、河津建設提供
大規模な土砂崩れで土砂ダムができた日田市小野地区=7月8日、河津建設提供
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新鮮な野菜が並び住民らの笑顔であふれた「やさい工房沙羅」
新鮮な野菜が並び住民らの笑顔であふれた「やさい工房沙羅」
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黄金色になった井上酒造の田んぼで酒米を刈り取る参加者
黄金色になった井上酒造の田んぼで酒米を刈り取る参加者
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 九州豪雨から5日で3カ月を迎えた。大規模な土砂崩れや川の氾濫で大きな被害が出た日田市の小野地区や大鶴地区では復旧工事も進み、住民生活も徐々に日常を取り戻す一方、今も避難を余儀なくされ、「戻りたいが二次被害が怖い。安心して暮らせる日は来るのか」と複雑な思いを抱える人も多い。

 小野地区では、大規模な土砂崩れで川がせき止められ「土砂ダム」が出来た。ダムは解消し仮設道路も開通したが、同地区鈴連町では今も96世帯のうち24世帯がみなし仮設住宅や公営住宅などで暮らすという。

 山本省悟さん(66)もその一人だ。大規模土砂崩れ現場から約200メートルの小野川沿いの自宅は被災を逃れたが、生活排水を処理する装置が壊れて住めなくなり、市内のみなし仮設住宅に移った。キュウリやトマトがたわわに実っていた近くの畑の一部は濁流にのまれた。「孫と食べるのを楽しみにしていたが、何も無くなった」

 自宅からの風景、旧友と遊んだ通学路は無残な姿に変わった。それでも心を奮い立たせ、週末ごとに家の片付けや残った畑での農作業に努めるが、むき出しの山肌に不安は募る。「かけがえのない古里。いつかは帰りたい。再び土砂崩れが起きないような復旧を」と望む。

 浸水被害を受けた小野地区の小野小には今も、子どもたちの声は戻らない。校舎の復旧工事は終えたが、通学路の安全が確保できず、児童は地区外の戸山中での授業が続く。冷川善幸校長は「保護者と協議し、児童の安全を最優先に再開を判断したい」という。

    ◇      ◇

 大鶴地区の上宮町は、全35世帯のうち8世帯が自宅に戻れないでいる。大工の森山義則さん(64)は、妻と次男とともに7月下旬、町内を出て地区内の空き家に引っ越した。

 裏山からの泥水などで自宅は半壊、大工道具も流された。ボランティアの手を借りて片付けはしたが、裏山は崩落の恐れがあり、強い雨のたびに自宅は浸水する。「離れたくない。でも不安の中で生活しても心が休まらない」と苦渋の決断をした。年内には市中心部へ移ることも検討している。

 市は「地域内移転」を含めた生活再建の支援策を探っているが、結論はまだ先になりそう。上宮町の高齢化率は50%超。地域離散が進めば災害時に欠かせない「共助」の力は低下する。自治会長の藤井隆幸さん(68)は「絆を守り地域を維持するため、自宅から離れて暮らす人たちとの交流や話し合いの場をつくりたい」と話した。

    ◇      ◇

 復旧復興は道半ばだが、住民たちは日常生活を取り戻そうと、力強く歩みだしている。

 大鶴地区大肥本町の農産物直売所「やさい工房沙羅」は5日も朝から客が次々に訪れ、店内は活気にあふれた。濁流が流れ込んで営業休止していたが、9月下旬、2カ月半ぶりに再開。運営する大鶴まちづくり協議会の藤井安之会長(77)は「地域の復旧復興を後押しする場にしたい」と意気込む。「ここは知った人とも話ができるからうれしい」。野菜を持ち込み、買い物を済ませた平川操さん(79)はようやく戻った日常に笑顔を見せた。

 大鶴地区大鶴町の老舗蔵元「井上酒造」は5日、自社の田んぼで特別純米酒「百合仕込み」用の酒米の収穫を行った。作業には同地区でボランティア活動を続ける名古屋市のNPO法人職員松山文紀さん(45)ら20人が参加。「地元の会社が元気を取り戻すことが地域の元気につながる」(松山さん)との思いからだ。

 同社は、裏山から襲った山水で資材や設備に大きな被害を出したが、田んぼは奇跡的に生き残った。同社専務で「百合仕込み」を手掛ける井上百合さん(52)は黄金色に実った稲穂を眺め「今までで一番の出来」と目を細める。「この3カ月、必死で走ってきた。周囲への感謝を忘れず、これからも酒造りに向き合っていく」と力を込めた。

=2017/10/06付 西日本新聞朝刊=

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