小鹿田の唐臼修繕に奮闘 日田の職人小袋さん1人で作業 「ぬくもりある音を後世に」 [大分県]

チェーンソーで丸太を加工し、唐臼のきねに仕上げる小袋信裄さん
チェーンソーで丸太を加工し、唐臼のきねに仕上げる小袋信裄さん
写真を見る

 九州豪雨から5日で半年。被害を受けた日田市の国指定重要無形文化財「小鹿田焼」の陶土を砕く唐臼を、たった1人で修繕する職人がいる。大工の小袋信裄(のぶゆき)さん(74)=同市。「全て手作業のため時間はかかるが、小鹿田焼に無くてはならないもの。元の風景を取り戻したい」と休日返上で奮闘を続けている。

 ギー、ゴトン。直径30センチ、全長6メートルの松の丸太を加工した唐臼は、1日に約1500回、動き続ける。「ししおどし」のように、川から引き込んだ水の力を利用して土を砕く音は環境省が選ぶ「残したい日本の音風景100選」の一つだ。10日間ほどつかれて粒子状になった土は、水を加え、何度もこしたり乾燥したりして小鹿田焼の原料になる。

 小袋さんは、陶工が集まっている皿山集落で生まれ育ち、中学卒業後に大工になった。20年前に頼まれて以降、唐臼の製作を請け負っている。

 九州豪雨では、唐臼45基のうち14基が流失したり損壊したりした。本業の合間を縫って、例年の3倍にあたる9基のきねを新調した。残る5基も春までの完成を予定している。

 丸太の皮をはぎ、チェーンソーで四角に仕上げたきねの片方には、水をためる穴を開ける。もう一方には土をつく棒を付ける。苦労するのは、きねの支点の位置だ。最良の位置は使う木によって異なり、数センチずれるとバランスがとれない。設置して水をためながら徐々に支点の位置を調節していく。「反りや素材の良さを生かして、優しく丁寧に手を加えてやる」と笑う。

 標高約400メートル。小鹿田焼の里の冬は厳しい。きねには、そんな環境で育ち年輪が詰まった松が適しているが、真っすぐに伸びた松はなかなか見つからず、今回も苦労した。唐臼製作は冬場でも、びっしょり汗をかくほどの重労働だ。古希を過ぎ年々、作業はつらくなっているが、後継者は見つかっていない。「自然と人の手の融合で生まれるのが小鹿田焼。ぬくもりのある音を後世に残したい」。今日も黙々と作業を続ける。

=2018/01/05付 西日本新聞朝刊=

西日本新聞のイチオシ [PR]

西日本新聞のイチオシ [PR]