アンパンマンがくれた夢 スリランカでアニメ制作目指す [大分県]

「今は卒業制作の真っ最中です」と話す
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スリランカの民族衣装を着て「受賞は大変うれしかった」
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 約1800人が応募した昨年12月20日の「第7回全日本留学生日本語スピーチコンテスト」(東京)で、別府市の別府溝部学園短大2年のウィムクティ・マーダウィ・エヘレーポラさん(25)が最高賞の外務大臣賞を受賞した。コンテストでは、母国・スリランカで初のアニメーターになる夢を語った。アルバイトに追われ、思うように勉強が進まなかった日々の中、くじけそうな心を支えてくれたのは、幼い耳に刻んだ「アンパンマン」の主題歌だった。

 5歳のころ、祖父の自宅でテレビ画面いっぱいに映し出されたキャラクターに目がくぎ付けになった。「何だろう。生き物かな」。初めてみる鮮やかな色彩、かわいらしい絵-。日本の子どもたちも大好きなアニメ「それゆけ!アンパンマン」だった。見よう見まねで絵を描き始めたが、それだけではキャラクターは動いてくれない。次第にアニメ大国・日本で勉強したいという気持ちが大きくなり、高校時代から日本語を学び始めた。

 2016年春に来日し、現在、同短大でグラフィックデザインを学んでいる。文化の違う異国で初めての独り暮らし。苦労したのはアルバイトだった。カメラを組み立てる仕事は時間調整がうまくできず、帰宅は朝の3時、4時になることも。あっという間に1年が過ぎた。アニメに対する情熱もぐらつき、ホームシックにもかかった。

 そんな時、頭の中を巡ったのが「アンパンマンのマーチ」だった。

♪何が君の幸せ

 何をしてよろこぶ

 分からないまま終わる

 そんなのは嫌だ

 忘れないで夢を

 こぼさないで涙

 だから君は

 飛ぶんだどこまでも♪

 自分に言われている気がした。「何を迷っているの。アニメを作りたいために日本に来たはずじゃなかったの」。かすんでしまいそうになった将来の夢が再びはっきりした。コンテストでは、こうした思いを5分30秒にまとめた。描いたイラストを見せ、「アンパンマンのマーチ」も大きな声で思いっきり歌った。

 演題は「一粒の種になりたい」とした。「一粒の麦が芽を出せば多くの麦を作ることができる」。短大の恩師から教わった言葉だ。

 アニメ制作は多岐にわたる。原画を描いたり、シナリオを考えたり、映像編集をしたり。とても1人ではできない。自分が「一粒の種」になって仲間を増やし、アニメ制作の土壌がない母国で普及させたい。そして日本のように、スリランカの豊かな文化を若者に伝えるアニメを作りたい。そんな思いを込めた。

 今春短大を卒業し、日本の会社で働きながらもう少しアニメ制作を学ぶつもりだ。アンパンマンからもらった応援ソングを心の中で歌いながら、夢に向かってまっすぐに。

=2018/02/03付 西日本新聞朝刊=

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