「建築的思考」常に持ち 「国東時間」注目集め続ける アキ工作社社長 松岡勇樹さん [大分県]

段ボールを加工した立体造形品は、大手服飾ブランド「エルメス」のショーウインドーを飾り、ディズニーとのコラボレーション作品を請け負うなど国内外で活躍する
段ボールを加工した立体造形品は、大手服飾ブランド「エルメス」のショーウインドーを飾り、ディズニーとのコラボレーション作品を請け負うなど国内外で活躍する
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 段ボールを使った胸像やマネキンなど多彩な造形物を加工・販売するアキ工作社を故郷の国東市安岐町に設立して20年。社長の松岡勇樹さん(55)は、2013年6月から「国東時間」と呼ぶ週休3日制度を導入し、長時間労働や働き方改革が社会の大きな課題となる中で注目を集め続けている。

 転勤族の子として生まれ、九州内を転々とした。福岡で高校生活を過ごし、将来を描けないまま、流されるように中央大(東京)の経済学部に進学した。周囲の会話は車や異性の話ばかり。「これでいいのか。このまま大学を卒業して、自分はどうなるのか」。不安を感じ、半年で退学した。

 自分が本当にしたいことを考えた。幼少時代から絵を描いたり、粘土をいじったりすることが好きだった。手触りの感覚がある仕事がしたい-。そんな思いにたどり着き、武蔵野美術大(同)建築学科の門をたたいた。個性ある仲間に囲まれ、刺激的な日々が始まった。

 3年生になり、人生の師とも言える建築家の竹山実氏に出会った。具体的に何かを教えてもらったという記憶はない。それでも「空間がねじ曲がるくらいのオーラ」を感じ、その生き方やたたずまいに引かれた。

 頭に残り続ける一言がある。大学院のゼミでのディスカッションで、自分の考えを発表したときのこと。「君の言葉は精度が低い。全く伝わってこない。もっと高い精度で語らなければ駄目だ」。そう言われた。思ったまま話すのでは駄目。考え、突き詰め、洗練させて、アウトプット。言葉も作品も。そう理解した。

 「竹山さんに出会わなかったら今の仕事はしてないかもしれない」と感じている。建築もデザインも、大事なのは成果物ではなく、完成させるまでの組み立て方であり、それを学んだという。自分が住んでいる場所をどう読み解き、どう設計していくか。その「建築的な思考」の延長上に国東時間はあると考えている。

 都会とは異なる時間が流れる国東半島。「都会と同じ働き方では疲弊してしまう」と感じ、国東のような中山間地には、お金だけではない何かが人や会社の成長に欠かせないと考えた。

 それは地域との関わりやつながりから得られる経験であり、そこに時間を割く必要がある。だから、週休3日とはいえ単純に休日が増えるわけではない。増えた自分の時間を、どう地域で使うかが重要になってくる。それが国東時間という「会社や国東の人々のライフスタイルの一つの設計、デザイン」だ。

 社名も4月に「国東時間」に変更する予定という。「地域共同体として再出発したい」。視点は常に俯瞰(ふかん)している。

=2018/02/07付 西日本新聞朝刊=

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