「死亡手続き」一元化 別府市が専用コーナー 書類一括作成「たらい回し」ゼロ [大分県]

別府市役所地下1階にある「おくやみコーナー」。奥の個室で、遺族は担当職員から手続き方法の説明を受ける
別府市役所地下1階にある「おくやみコーナー」。奥の個室で、遺族は担当職員から手続き方法の説明を受ける
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死亡者情報を書き込む「お客様シート」。右は遺族が回る必要がある課を示した一覧表
死亡者情報を書き込む「お客様シート」。右は遺族が回る必要がある課を示した一覧表
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 大切な家族を亡くしたばかりの遺族にとって、死亡時の行政手続きはわずらわしいもの。そうそう経験するものでなく、戸惑った方も少なくないはずだ。別府市は約2年前から、手続きを一元化し、それにかかる時間を3割程度短縮させた。遺族からは感謝の声が届き、自治体の視察も相次ぐ。悲しみに暮れる遺族に寄り添った「たらい回しゼロ」の取り組みが注目を集めている。

■まずは「おくやみコーナー」で平均30分

 今春、市役所地下1階の「おくやみコーナー」を市内に住む女性(55)が訪ねた。5日前に弟を亡くしたばかりだ。女性は弟の個人情報などを「お客様シート」に記入し、担当職員から手続きが必要な各課の場所や必要書類などが記された一覧表の説明を受けた。この女性はレアケースで、コーナーだけの手続きで終了したが、遺族の多くはこの後、関係各課を回り手続きに入る。

 「あちこちに行かないといけないと思っていたが、そんなことはなかった。今日で一段落。これから母とゆっくり、弟の思い出に浸れます」と女性。担当の園田弘美さんは「ここでの手続きは平均30分ぐらい」と説明してくれた。

■手続き完了までの時間は3分の2に短縮

 市によると、年齢や保有資産などで違うが、死亡時には最大13課の67種類の書類が必要。コーナーを設置する以前は、手続きに疲れて「明日また来る」と帰ってしまったり、「何枚書かせるのか」と憤慨したりする市民もいた。しかし設置後は、全て手続きが終わるまでの時間は「感覚的だが、3分の2程度に減った。トラブルもほとんどない」という。

 一元化の取り組みは、2015年7月に発足した若手職員11人による「住民サービス向上のためのプロジェクトチーム」(PT)で検討された。新しい視点で政策提言してもらう長野恭紘市長の肝いりプロジェクト。同PTは窓口業務に焦点を当て、特に煩雑な死亡時手続きに関して、専用コーナーの設置を提言した。

 これを受けて16年4月から、財産活用課の柏木祐子さん(現総務課長補佐兼市民サービスカイゼン係長)が中心になり、複数ある関係書類の共通項目を調べるなどして仕組みを構築し、関係各課への説明なども急ピッチで進め、1カ月後の5月16日にコーナーを開設、業務を始めた。

■「負担減った」と好評 他業務への適応も検討

 担当する職員3人はまず、遺族に「このたびはご愁傷様です」と声を掛けることから始める。遺族は「お客様シート」に死亡者の氏名や生年月日、高額医療費や葬祭費の振込先金融機関名など必要事項を手書きで書き込む。担当職員がパソコンにこのデータを入力すると、手続きが必要な課が抽出され、関係書類が一括作成される。

 遺族はどの課を回ればいいか、どんな書類が必要かなどを記した一覧表について説明を受けて、関係各課へ。死亡者の情報は庁内ネットワークで関係各課に届いており、遺族が訪れる前から準備にとりかかれる。

 各課を回ることができない場合は、関係課職員がコーナーに来て手続きすることもできる。遠方に住み来庁できない遺族には電話で必要事項を聞き取り、書類を郵送するサービスも行っている。

 コーナー開設から既に約2800人以上が利用。アンケートやインターネットなどを通して「大変助かった」「丁寧に説明してくれた」「市民の側に立って応対してくれた」などの声が寄せられているという。また福岡市や宮崎県都城市など全国から視察があり、電話での問い合わせも40件を超えた。

 今後市は、システム改善や転入・転出届など他の業務にも適応できないかを検討する。柏木さんは「『負担が減った』という声を聞くとうれしくなる。市民に寄り添う気持ちを忘れず、小さな改善を積み重ねていきたい」と話している。

=2018/05/08付 西日本新聞朝刊=

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