「犠牲者をいち早く家族の元へ」の一心で…耶馬渓山崩れ、身元特定に奔走の検死官 [大分県]

「家族の思いをくんで、早く、正確な検視を心がけた」と話す羽田優一・県警検視官室長
「家族の思いをくんで、早く、正確な検視を心がけた」と話す羽田優一・県警検視官室長
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 中津市耶馬渓町金吉(かなよし)の大規模山崩れは、安否不明の6人を遺体で発見、発生から約2週間で全員の身元が確認された。自衛隊などによる夜を徹しての捜索が続いた中、遺体の身元特定に奔走したのが大分県警の検視官たちだ。DNA型鑑定だけでなく、犠牲者が使っていた医療機器を調べるなどあらゆる方法を駆使して特定につなげた。指揮した羽田優一・検視官室長(51)は「ご遺体をいち早く家族に戻したい、その一心だった」と語り、災害の理不尽さを胸にしながらの作業を振り返る。

 作業にあたったのは、捜査1課検視官室の8人と中津署員17人。山崩れで崩落した土砂の量は数万トンと推定され、捜索は重機で巨岩を砕きながら進められた。不明者の生存が分からない中、県警は速やかに対応できるよう事前に法医学者や歯科医と連絡を取り、日常的な事件事故を担当しつつ24時間態勢を整えた。

 羽田室長は、最初に見つかった男性の遺体を担当した。顔の傷が少なく、親族の確認で特定した。「突然の家族や友人との別れ。悔しかったろうに」。遺体に付いた泥を丁寧に拭った。

 特定が難しかったのが、3世代の一家女性3人だった。身元特定の根拠となるDNA型鑑定だが、3人は血縁者でDNA型が近い。取り違えがないよう歯型や歯の治療痕、体の特徴など何項目も調べた。

 最初に見つかった1人は、残る2人が未発見でDNA型を対照する近親者がいなかった。そこで県警は体内の医療機器に着目。法医学者に取り出してもらい医療機器の機種や製造番号を、通院していた医療機関の記録と詳細に照らし合わせ、特定に至ったという。

 「思った以上に早く戻していただいた。ありがとうございました」。中津署で遺体を引き渡した際、ある家族から掛けられた言葉が忘れられない。羽田室長は「災害で家族を失った遺族の悲しみや、やるせなさはとても深く、事件事故と変わらない。早く再会したい。見送ってあげたい。そんな気持ちに応えられていれば、よかった」と語った。

=2018/05/11付 西日本新聞朝刊=

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