県教委採用取り消し訴訟の割れた判決確定 敗訴の秦さん「納得できる説明を」 勝訴の教諭弁護士「手放しで喜べない」 [大分県]

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 2008年の県教育委員会汚職事件を巡り、「不正合格」として採用を取り消された男性2人が処分の撤回を求めた二つの訴訟は、最高裁が6月28日に上告を退け、「適法」「違法」と判断が割れたまま終結した。同じ状況で、片や採用を認め、片や採用を認めないとする司法判断。統一的な判断が示されなかったことに、敗訴した秦聖一郎さん(32)は「納得できる説明がほしい」と憤った。

 秦さんの訴訟では、大分地裁が16年1月、「採用の維持は相当性を欠く」として採用取り消しを適法と判断。精神的苦痛に対する賠償金400万円の支払いを県に命じた。福岡高裁も17年6月に一審判決を支持、秦さん側が上告していた。

 一方、中学校教諭男性(40)の訴訟は、大分地裁が15年2月、採用取り消しを違法と判断。県に33万円の賠償金支払いを命じた。福岡高裁判決(16年9月)は一審判決を支持し、県側が上告。最高裁は両訴訟について、憲法違反などに当たらないとして、いずれの上告も棄却した。

 秦さん、男性教諭ともに不正に関与しておらず、両訴訟の争点もほぼ同じ。なぜ判決は割れたのか。秦さんの弁護団は、口利きの経緯が解明されたかで、違いが生じたとみる。

 秦さんの訴訟は、大学時代の教授が口利きし、県教委幹部が不正に加点したと認定。「大幅に加点された情実人事で、採用は違法」とした。一方、男性教諭の場合、口利きの経緯は解明されておらず、判決は「県教委は、具体的な事情を調査することなく採用を取り消した」と指摘。男性教諭は情実で採用されたとは断定できないため、採用は違法とは踏み込まず、「採用維持は著しく不当ではない」と判断。県の採用取り消しは違法と判断した。

 秦さんの弁護団の一人、瀬戸久夫弁護士は「他に違いは見当たらないが、それでも理解できない。最高裁は両訴訟の判断が異なる理由を明らかにすべきで、使命を放棄した」と批判する。男性教諭の弁護団の一人、岡村正淳弁護士も「勝訴が確定したが、手放しで喜べない」と話した。

 秦さんは「この10年、失ったものが多すぎてまだ受け止められない。ただ、県教委のゆがみの一端を法廷で示すことはできた」。男性教諭は「やってきたことが間違いではなかったと、心の底からうれしく思った」とのコメントを出した。

 県教委は、男性教諭が採用を取り消されたことで生じた給与の差額などについて対応する方針。再調査などの対応は検討していないという。弁護団は「両訴訟とも県教委の責任を認めており、他に採用取り消しや自主退職に追い込まれた人たちも含め、謝罪すべきだ」と非難。工藤利明教育長は「10年間、関係者に心労をかけたことはおわびしたい。司法の判断に従って対応していく」と言うにとどめている。

=2018/07/04付 西日本新聞朝刊=

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