「九州の屋根」日帰りで満喫 初登山、くじゅう・星生山へ [大分県]

登山道から見える大パノラマを眺めて一息
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星生山の山頂から広場へ向かう途中の険しい岩場を下る
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 「せっかく大分にいるんだから、山登りをしてみたら」。趣味も運動習慣もなく、何か新しいことを始めたいと思っていたとき、上司の言葉に心を動かされた。登山グッズを一から買いそろえ今秋、九州の屋根、くじゅう連山の中で最も標高が高い登山口「牧ノ戸峠」(九重町)から星生山(ほっしょうざん)山頂(1762メートル)を目指した。

 登山口に集合したのは午前8時半。既に駐車場は満車になるほどにぎわっている。車を出ると、大分市中心部よりも空気はひんやり。約1300メートルという登山口の標高の高さを肌で感じた。

 今回はくじゅう連山のガイドを行っている「くじゅうネイチャーガイドクラブ」のツアーに参加させてもらった。準備運動をしながら、ガイドの安武秀年さん(49)がコースの特徴を説明してくれた。「最初の20分は登山に来たことを後悔するくらいきついので、頑張ってくださいね」。体力にあまり自信がない私は、その言葉を聞いただけで少し後悔したが、おそるおそる一歩踏み出した。

 きつい道の正体は、登山道のイメージとはかけ離れた「コンクリート舗装の階段」。コンクリートは土に比べて衝撃を吸収してくれず、足をくじかないようにと履いたハイカット仕様の登山靴だと、階段を上るたびに普段よりも足を上げなければならない。5分ほどで息切れし、コンクリート道の中間地点にある展望台に到着した頃には冷えていた手先も温まり、顔には汗がにじんだ。

 階段を上り終えると、傾斜のある岩場と平らな土の道が交互に訪れる。「だからこのコースは初心者にも人気なんです」と安武さん。岩場で乱れた息を平らな道で整えることができるため、疲労の蓄積が少ないという。

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 景色の良さもこのコースの人気の理由だ。道を進むごとにタデ原湿原や三俣山、硫黄山など、くじゅうの大パノラマをさまざまな角度から眺めることができ、足を止めるたびに心を動かされる。この日は紅葉シーズンだったこともあり、登山道のあちこちで写真を撮る人たちを見かけた。

 登山道を進むこと約1時間15分。久住山と星生山の分岐点に到着した。「山頂までもう少し」。安武さんの言葉を励みに、大きな岩をひとつずつ登り続ける。少し息が乱れると「山登りは小股が基本。そうすれば段差が大きいところも疲れが少なくなります」とアドバイスを受けた。

 岩場の中で安全な足場を探し、足を置く。この動作を30分ほど繰り返していると、ついに山頂へたどり着いた。霧がかかり、山頂からの眺めを堪能できなかったが、歩いてきた道を見下ろし、気温3度の冷たい空気に肌を刺される。1700メートル級の山の高さを感じることができた。

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 「あとは楽に下山」。甘い考えを抱いたが、すぐに裏切られた。片足しか置けない細い道の真横は断崖絶壁。「滑落の危険があるので慎重に進んで」。緩んだ気をもう一度引き締めて、この日一番の険しい道を進み、久住山への道中にある久住分かれと呼ばれる広場付近で昼食。その後、2時間弱で牧ノ戸峠に戻り、約5時間の登山を終えた。

 その晩、疲れを癒やそうと別府の温泉に向かった。登山後にすぐに温泉に行けるのも、「おんせん県」大分ならではのぜいたくだ。

 翌朝には足腰が少し筋肉痛になったが、その痛みで再度、達成感を味わえた。「これからもたくさん登って山を好きになってくださいね」。下山後の安武さんの言葉を思い出し、早速友人と登山計画を立てた。

=2018/12/04付 西日本新聞朝刊=

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