37年間合唱の「音盤」作り 豊後高田の高田中 努力の証し、卒業生に贈る [大分県]

1981年度から始まったレコード製作はCDからDVDに変化。本年度の卒業生のDVDももうすぐ出来上がる。
1981年度から始まったレコード製作はCDからDVDに変化。本年度の卒業生のDVDももうすぐ出来上がる。
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 豊後高田市の高田中(356人、安藤慎一校長)で文化祭の合唱を記録し、卒業生に贈る習わしが37年間続いている。“作品”はLPレコードからCD、そしてDVDと変わったが、自分たちが努力した証しを残したいという生徒たちの熱い気持ちは変わらない。資金集めは自分たちで行い、地域の支援も続く。今年も3月の卒業式に向けて準備は整った。

 発端は、荒れた学校を変えたいという若手教師の決意だった。1980年に音楽教諭だった久次美紀さん(69)が同中に赴任すると、教科書すら持ってこない生徒がいた。楽器もいらず、一人一人に出番と役割がある合唱は「子どもたちの居場所がつくれる」と考え、合唱に取り組むことを提案。成果を11月の文化祭で披露することにした。

 合唱曲は、流行していたフォークソングなどは避け、混声四部合唱曲「大地讃頌(さんしょう)」など難しい曲を選んだ。意見をぶつけ合いながら練習を重ねる中で、人との付き合い方などを学んでほしいとの思いからだった。

 「合唱など時間の無駄だ」という意見も教職員の中にはあった。だが生徒たちの様子が変わり、学校が落ち着いてくると、そんな声は出なくなったという。

 「猛練習の成果を残したい」。81年に生徒からそんな声が上がったと、当時の生徒会役員で現在は同中教諭の山崎正勝さん(52)は振り返る。「記念なのでカセットテープではなくレコードにしたい」。費用は約60万円かかったが、生徒たちには“勝算”があった。

 同中では学校の備品代などに充てるため、生徒が空き瓶を回収していた。売り上げは年間数十万円。「保護者や地域を巻き込めばなんとかなる」と生徒がリヤカーを引いた。住民も率先して空き瓶を提供。資金は目標額に達し、山崎さんたち81年度の卒業生は自分たちの合唱のレコードを手にした。

 その後も合唱録音は残り、89年度にCD、2011年度にはDVDと変わりながら続いた。山崎さんは「まさかこんなに続くとは思わなかった」と振り返る。

 「合唱を練習するうちにクラスや学年が自然にまとまっていく」と話す前生徒会長の3年明石愛さん(15)も昨年7月、空き瓶や空き缶の回収に当たった。予告のチラシを地域に配布。リヤカーを引くと、多くの住民が「待っちょったよ」と協力してくれた。自分たちが地域に支えられていることも実感できた。

 撮影や編集の担当は業者から教諭に代わった。本年度も昨年11月に撮影を終え、先生たちが2月に編集し、手作りのDVDが3月の卒業式で配られる。音楽教諭の英(はなぶさ)久美子さん(48)は「合唱は今も昔も高田中の生徒を人間的に大きく成長させている」。伝統はこれからも引き継がれていく。

=2019/01/29付 西日本新聞朝刊=

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