日田のおきあげ人形作りに挑戦 細部にこそ気を配る [大分県]

伊藤京子さん(右)にアドバイスを受けながら人形作りをする記者
伊藤京子さん(右)にアドバイスを受けながら人形作りをする記者
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記者が初めて作り上げた「だるま」
記者が初めて作り上げた「だるま」
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日田おきあげ人形研究会会員の作品「義経と静」
日田おきあげ人形研究会会員の作品「義経と静」
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 日田市で開催中の「天領日田おひなまつり」(31日まで)の会場で、すまし顔のひな人形とは風貌が異なる人形に目が止まった。似合いの着物で躍動感あるポーズを決めているのは「おきあげ人形」だ。制作体験ができると聞き「日田おきあげ人形研究会」を訪ねた。(笠原和香子)


 「今日はだるまの人形を作りましょう」。会員の伊藤京子さん(73)の手ほどきで体験が始まった。厚紙にだるまの形を書き写し、線に沿って七つに切り分ける。その一つずつに綿を載せ、表面にしわができないように薄い紙で包む。強く引っ張ると破れるから、力加減が難しい。

 黙々と作業する私の横で会員たちはにぎやかだ。孫から法事へ、話題は次々に変わる。「茶色は合わないね。赤は?」「その方が若く見えるよ」。次はファッションの話かと思いきや、視線の先には制作中の武士の人形があった。袖口からのぞく部分の布と色を決めているのだ。表情は真剣だ。「年齢設定は?」「この人の方が年下。赤にしよう」

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 おきあげ人形は、参勤交代の江戸土産として、九州では福岡県久留米市に伝わり、うきは市や日田市に広まったらしい。歌舞伎や人形浄瑠璃の一場面を再現した作品が多く、登場人物の年齢、身分、時代背景を踏まえて作る。使う布の色や素材、表情や顔のしわ数にも作者は頭を悩ます。わずかな違いが人形の印象を変えるからだ。「苦悩しながら作っています」と伊藤さんは笑う。

 会員たちは色や素材を経験と感性を基に選んでいるようだ。最初は細部まであまり考えずに作っていたという人も、きっと人形と向き合うほど感性が磨かれ、細かい違いが見えるようになったのだろう。

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 薄い紙で包み終えたパーツを花柄の生地で包む。「花の向きや位置に気を付けてね」。細部へのこだわりが作品の良しあしを決める。顔と全パーツを貼り合わせ、裏に台紙と人形を立てる竹串を付けてようやく完成した。よく見ると左右非対称でのりの跡も見えるが、むしろこれで良いのだという。

 きょうも支局で仕事中、机の端に置いた人形の優しいまなざしと目が合う。楽しみながら真剣に人形作りに取り組む会員たちの姿がよみがえる。「細部にこそ気を配るのよ」。そう諭されているようだ。

 ◇人形作りの体験や見学は3月中の土日、祝日午前10時から天領日田資料館で。体験時間は約5時間で予約が必要。材料費1500円。

=2019/03/14付 西日本新聞朝刊=

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