「梅干し弁当の日」園児の心に根付く 日田市の月隈こども園 豪雨時に思わぬ効果も [大分県]

持参した白飯と、手作りの梅干しを食べる園児
持参した白飯と、手作りの梅干しを食べる園児
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 おかずが梅干しだけの「梅干し弁当の日」が、日田市城町の「月隈こども園」(武内和朋園長)で40年以上続けられている。簡素な食事で食べ物の大切さを考えてもらおうと始めた活動だが、園児の心に根付き、「九州豪雨時にも生かされた」と家族から感謝の声が寄せられている。

 同園の「梅干し弁当の日」は1970年代に始まった。高度経済成長で食べ物に不自由しなくなった時代。「飽食の時代だからこそ粗食を味わい、白ご飯本来のおいしさを知ってもらおう」と、白飯と梅干しだけを食べる日をつくった。

 現在はメニューにみそ汁を加え、2~5歳児を対象にほぼ毎月1回、第1水曜に継続。普段は給食だが、この日は園児たちは家から白飯のみを持参する。梅干しは10年ほど前から、同市大山町の梅農家の協力を得て、年長児たちが手作りしているものを食べる。

 最初は多くの園児が「酸っぱいのが嫌」と箸を伸ばさないが、卒園時には「酸っぱいけどおいしい」とほとんどが大好きに。自宅では食べない子も園では進んで食べるといい、「自分たちやお兄ちゃん、お姉ちゃんが作った梅干し、という意識が後押ししているんでしょうね」と武内園長。

 同園での取り組みは、2017年の九州豪雨の被災地で思わぬ効果を生んだ。大規模な土砂崩れで道路が寸断されて一部が孤立した同市小野地区。住民の石橋恵子さん(71)は、電気も水道も止まる中、近所の井戸水で数十年ぶりに鍋で米を炊いた。だがおかずは梅干しだけだった。

 しかし当時同園に通っていた孫蒼斗(あおと)くん(7)は、おいしそうに梅干しを食べ、白飯を2杯平らげた。娘と3人で心細い時間を過ごしていた石橋さんにとって、蒼斗くんの笑顔が元気の源になった。「こども園のおかげで梅干し好きになった。感謝しかない。梅干しを見るたびにその思いがよみがえる」と話す。

 武内園長は「災害時に経験が生きたのは本当にうれしい。ご飯のおいしさを味わう大切な機会。食べ物の大切さを伝えるため、今後も続けていきたい」と話した。

=2019/04/05付 西日本新聞朝刊=

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