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【日日是好日】みんな、人生頑張っている 羅漢寺次期住職 太田英華

 イチョウの葉がやっと色づいてきました。毎年、麓の大きなイチョウが黄金色になると、山のモミジも一斉に色鮮やかになります。紅葉シーズン到来です。

 気が付けば立冬。本堂の夏の荘厳(しょうごん)を慌てて冬の荘厳に変えました。衣替えの時期に変えておかなければいけなかった装飾でしたが、何とか冬支度が整いました。今年の耶馬渓は例年になく行楽客が詰めかけています。日本遺産のアピールの効果でしょうか。羅漢寺も例年になく参拝者でにぎわっております。「こんにちは」と境内でのごあいさつに続いて、話をされる方も増えてきました。

 「5年ぶりに来ました。来たかったけれど来られなくて」。そう話してくださったのは、夫婦連れの奥さんです。「有り難うございます」と握手した手の冷たさに私が驚いていると、「実はこの病気で来られなかったんです。膠原(こうげん)病です。でも、うまく付き合うしかありません。頑張ります」と。ご夫婦はこのコラムをいつも読んでくださっているとのことでした。少しお話をした後に「元気になりました」とおっしゃってくださいました。

 今度は本堂前の池で出会ったご夫婦との会話です。

 「ここは気持ちがいいね。僕は千葉から来たんだけど、実に気持ちがいい」とおっしゃるご主人は、テンガロンハットをかぶったおしゃれな方でした。どうやら、奥様とキャンピングカーで九州を旅行中のようです。

 「お元気ですね」と申し上げると、「いやあ、元気そうに見える? 実は肝臓にがんがあるんだ。でもね、うまく付き合ってんだよ。病院に行くのも好きだしね」と返ってきました。2階の阿弥陀堂でお二人が打った鐘は芯の強い音がしました。「病気に負けないぞ」と言っているようです。

 本堂前で再びお会いすると、すがすがしい顔のお二人が「阿弥陀堂に行って正解。来年、絶対にまた来るから」とおっしゃってくださいました。

 別の日、北九州市のご婦人が相談に来られました。聞けば、広島に住むお嬢さんの代理とのこと。6歳のお子さんが血液の病気で骨髄移植の手術をしたのだけれど、経過が良くない。自分の過去の事など気になるので、羅漢寺に行ってお参りしてくれと頼まれたのだそうです。

 ふと「そのお子さんはお強いのではないですか」と尋ねると、こんな答えでした。「そうです。孫に申し訳ないという娘夫婦のことを思い、実は孫が私にこう言ったんです。『僕は天からお母さんとお父さんを見て、選んで来たんだから』って」

 「えっ? 6歳のお子さんがそんなことを?」。私は思わず涙があふれました。6歳で一生懸命に病と闘う彼から多くを学びます。別れ際、小さなモミジの葉をお渡しし「大丈夫。頑張れ」と申し上げました。

 皆さんの頑張っている人生。お話を聞いた私が一番励まされました。それぞれの境遇をどう受け止めて生きるか。皆さん、また笑顔でお会いしましょう。お待ちしております。合掌。

 【略歴】1967年、羅漢寺27代住職の娘として生まれる。高校卒業後、大学進学のため上京。20代半ばから40歳で出家するまでフラメンコダンサーとして活動。出家後、愛知県の尼僧専門修行道場で約5年間、僧堂修行し、2013年3月に帰山。現在羅漢寺28代次期住職として寺を守る。


=2017/11/12付 西日本新聞朝刊=

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