【意見】何が必要か話すことから 高野和良氏

九州大大学院人間環境学研究院教授 高野 和良氏
九州大大学院人間環境学研究院教授 高野 和良氏
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◆支え合いの場

 「地域社会」「地域福祉」などと言うとき、私たちは、どこを「地域」と捉えているだろうか。最小単位としての集落から、小・中学校区、市町村と圏域はさまざまで、それぞれ抱える課題も違っている。

 集落のご近所付き合いから老人クラブや婦人会まで、住民がどんな組織・団体単位で、そこになじみを感じ、動いているかが一つのポイントだ。愛着を持ち、「住み続けたい」「ここのために何かしたい」と思うような、支え合い活動の場が地域といえよう。

 これまで限界集落、地方消滅といった言葉が使われてきた。だが、人の暮らしはそう簡単には消えない。地方の集落にいるお年寄りは、集会所に集まって話し合い、集落の役割を分担して生活しており孤独ではない。また九州では、地方のお年寄りを、さほど遠くない所に暮らす子どもたち、中高年世代が支える実態がある。今のところ人口が減っても集落は維持されているが、むしろ地方の集落で暮らす40~50代の退職後が課題となる。集落外に働きに出るなどして地域の状況を共有する機会が少なく、バラバラで不安感が強いからだ。常に地域にいなくとも、祭りなど年に数度は地域で動くことで、つながりを紡いでいくのが大切だ。

 離れて暮らす子の世代は、実家に時々戻って親の買い物を代行するなどして支えている。だが社会福祉協議会がふれあい・いきいきサロンなどの地域福祉活動で支えてくれているのはあまり知らない。親が地域に支えられていると知れば、子の世代の不安は減り、地域のために役立ちたい意識も生まれる。そして、隣のおばあちゃんの買い物も一緒にしてあげようとなるかもしれない。わが家の中だけで終わっていることを少し外にも向ける仕組みづくりが必要だ。

 最近、都市から過疎地に一定期間移り住んで住民を支援する「地域おこし協力隊」、若い世代を中心に地方移住する「田園回帰」が注目されている。だが、外部に期待する前に、そこにいる人が地域のために何を考え、目指すかが大事だ。

 地域で活動する人は、情報を発信し広げ、困り事を抱える人は声を出すことだ。困ったときに助けてくれる仕組みは、社会のどこかにある。行政や福祉サービス頼りではなく、自分たちが生きていくのに必要なことを仲間や周りの人と話すこと。そこから何ごとも始まるだろう。 (談)

 ※地域活性化に取り組む「ここで生きるネット」メンバーの意見や見解、見識を月に1度、紹介します。

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 高野 和良(たかの・かずよし)九州大大学院人間環境学研究院教授 1963年生まれ、熊本市出身。九州大大学院文学研究科修士課程修了。山口県立大教授などを経て現職。専門は地域福祉社会学。


=2017/04/21付 西日本新聞朝刊=

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