【見解】可視化される「声」が原動力 西日本新聞メディアラボ・三重野諭

◆ネット記者として

 西日本新聞社グループのデジタル系企業に兼務出向して9カ月。私の書いた記事は、ほぼ新聞には載っていない。本紙のホームページに掲載するオリジナル記事だからだ。

 ネットは新聞とは違い、締め切りや配達エリアのような制限がない。いつでも、地域を問わずニュースを届けられる。昨年11月、JR博多駅前の陥没現場が復旧した数分後には、現地から記事や写真をネット上に掲載した。同12月には、わらや竹で作られ話題になった福岡県筑前町の「シン・ゴジラ」の解体作業をそばで眺めながら、「ゴジラ最後の日」の様子をヤフーニュースで全国に発信した。

 字数制限がないのも大きな違いだ。「今の学校を卒業したい」という中学生たちの思いを受け、閉校を延期した中学校を取り上げた記事は、昨年12月から今年4月までのシリーズ7本で、計約1万9千字。一般的な紙面に換算すると、3ページに相当する量だ。舞台となった大分県臼杵市の豊洋中は私の母校でもあったため、思い入れもたっぷりと書いた(記事は「異例の閉校延期」で検索を)。

 そうした経験を通して気づいたのは、ネットの最大の特徴は、読者の反応が見える点にあるということだ。「異例の閉校延期」シリーズ初回記事では、ヤフーニュースのコメント欄、フェイスブックやツイッターなどで数百件の感想が寄せられた。率直な賛同や批判は、学校関係者の目にも留まり、閉校延期したことの意味をあらためて一緒に考える材料になった。「取材を続けてほしい」という声も含め、予想外の反応の多さはシリーズ化する大きな原動力となった。

 コメントに突き動かされ、追加取材も行った。それは、閉校延期のために余計にかかった費用はいくらだったのか、という点。税金投入の是非についての関心が高かったからだ。

 調べてみると、思わぬ発見があった。横浜市の公立小中学校が決算をネットで公開していたのだ。少子化・過疎化が進み税収が減る今、教育予算をどうするか。記事では、納税者の視点で考えるための良い事例として紹介した。

 こうした「着想」も、ネットの反応がなければ湧かなかったと思う。引き続き、貴重な声に耳を傾けていきたい。


=2017/05/19付 西日本新聞朝刊=

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