【見解】不正明るみに 問い続けてこそ 鹿児島総局・金子晋輔

◆「陽光会」問題

 私が手を挙げると、決まって微妙な空気が流れる。またか-そんな冷ややかな声も聞こえてきそうだ。ほぼ毎月開かれる鹿児島市長の定例記者会見。必ず尋ねているのが社会福祉法人・陽光会の問題だ。他の新聞、テレビ局の記者が質問することはほとんどない。「孤独」な戦いを続けて1年近くになる。

 昨年3月23日付朝刊社会面で、陽光会が理事会議事録の偽造や不適切会計を繰り返していたことを報じた。この1週間ほど前、陽光会職員から内部告発を受けた。

 社会福祉法人は自治体から補助金の交付を受けるなど公共性の高い団体。不正が事実なら、市民の税金が「食い物」にされていることになる。何より告発者の訴えに奮い立った。「地元メディアの他社にも相談したが動いてくれない。不正を報じてほしい」

 初報以降も、記者会見の質疑や情報公開で入手した資料を基に、市が陽光会に改善勧告を出したことなど報道を続けた。その結果、さらなる不正の情報が寄せられた。

 陽光会は運営していたデイサービス施設で介護報酬を不正受給していた。報道後、陽光会はこの施設を廃止(昨年11月)。市はこれまでに約4175万円の返還を陽光会に命じた。一連の報道がなければ、事実は今も埋もれていたかもしれない。

 記者会見で繰り返し問うのは、行政の対応を「監視」する意味もある。

 実際、市の公募事業選定では首をかしげるケースがあった。陽光会が市の認可保育園に選ばれた経緯を調べると、九州の他の県庁所在地と異なり、市職員だけでつくる審査会で選考していた。識者は「時代遅れ」と指摘した。報じると、市は外部有識者を交えた審査に改めた。市幹部は「自分たちでは気づかないことだった。行政と報道機関の緊張関係は必要だ」と語った。

 昨年は、官房長官の記者会見で、回答に納得ができるまで繰り返し質問する女性記者が話題になった。国政と地方行政では取り扱うテーマの種類や広がりも異なるが、私たちが暮らすまちの問題を疑問が晴れるまで何度でも尋ねるのは同じだろう。「調査は長期化しているが、しっかり対応する」と述べた森博幸鹿児島市長。陽光会の問題をこれからも問い続けるつもりだ。

=2018/02/16付 西日本新聞朝刊=

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