【見解】地方の交通考える契機に 宮崎総局・河野賢治

◆JR九州の大幅減便

 ある週末の土曜日。JR九州が今春のダイヤ改正で運行を3割弱減らす吉都線(都城-吉松)に乗ってみた。1両に最大十数人がいたが、高齢者や高校生が多く、やはり生活路線だと感じた。70代の女性は「車の運転を子どもに止められているから、便数が減ると不便」と言った。

 九州の鉄道沿線に波紋を広げた今回のダイヤ改正。JR九州は吉都線を含め1日当たり117本を減便し、宮崎県では車掌不在の特急ワンマン運転も拡大する。県当局は強く反発し、九州各県に呼び掛けて中止を求めた。理由は利便性低下や安全面の不安だけではない。合理化の過程が不透明だったためだ。

 昨年末の改正案発表前、JR九州は水面下で沿線自治体に内容を説明したが、協議の余地のない事実上の通告だった。鉄道の利用目的は乗客ごとに異なり、地域特有の事情もある。これに最も詳しい自治体と協議せず、地方の足を切る姿勢には疑問を感じた。宮崎県の担当者は「利用者数だけで画一的に減便の線を引くなと言いたい」と批判した。

 実際、同県では吉都線減便で定時制高の生徒が夜に帰宅できなくなることが判明。県の調査で分かり、JR側も臨時便を出す事態になった。沿線との意思疎通を欠き、ニーズをつかみ損ねたミスだ。宮崎の場合、ダイヤ改正に早く反応して沿線の事情を訴えたため対応できたが、九州各県では今後も高齢者や障害者、学生といった交通弱者の不満が噴出するかもしれない。

 JR九州に求めたいのは公共交通機関の使命を見つめ直すことだ。国鉄分割民営化で発足時、赤字路線が多いため国から3877億円の経営安定基金を与えられ、運用益で赤字を補ってきた。基金は株式上場を機に全額交付され、固定資産税や都市計画税も軽減されてきた。手厚い支援は国民の協力ともいえる。利用者の事情に全て配慮するのは難しいが、一方的な合理化は国民への背信にならないか。

 人口減少や高速道整備で地方の鉄道事業は厳しく、全国で廃止された鉄道は2000年度以降、39路線に上る。沿線ごとにJRやバスなどの交通事業者と自治体、住民が今後のあり方を考えることも必要だろう。今回の一件を、人口減少時代の公共交通をともに考える契機にしたい。

=2018/03/09付 西日本新聞朝刊=

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