【揺れる安倍1強】(上)首相「選挙の顔」に陰り 狂った圧勝シナリオ

 20日午後、自民党本部8階の総裁選投開票会場。開票結果が読み上げられると、連続3選を果たした首相安倍晋三は、硬い表情のまま右手を挙げた。あいさつでは、真っ先に対立候補の元幹事長、石破茂を持ち上げた。「堂々と論戦を展開していただいた石破さん。心から敬意を表し、健闘をたたえたい」

 地方票でも圧勝を目指したが、石破に予想外の善戦を許した。安倍陣営の選対事務総長、甘利明は「党員は判官びいきとか、バランス感覚というものが必ず働く。それが自民党員の良さなのかと思う」と強がるしかなかった。

 一方、石破は高揚していた。記者団に囲まれ「1強、1強と言われる中で決してそうではないことを示したことに、大きな意味があった」。側近議員には「自民党もまだ捨てたもんじゃない」と漏らした。

▼「面従腹背」

 安倍が「圧勝」にこだわったのは、憲法改正などで異論を挟む石破を封じ込めるとともに、求心力を維持するためだ。

 近い議員には「自分の選挙だと思って活動して」と求め、楽観する側近は叱りつけた。19日は自ら国会議員会館の各議員の部屋を訪ね、名刺を置いて回る異例の対応まで見せた。

 結果は誤算だった。石破の国会議員票は支援を受ける参院竹下派を含めても50票程度とみられていたが、73票に積み上がった。「1強」の中、安倍に「面従腹背」する議員が少なくないことが浮き彫りになった。

 総裁選規定を変えてまで、あと3年の任期を手に入れた安倍だが、「今回が最後の総裁選」と繰り返した。2021年9月の「退任」が明確になり、党内の関心は「ポスト安倍」に移る。安倍自身、「レームダック(死に体)」と隣り合わせの政権運営となるのは自覚している。

 加えて地方票での苦戦。政府関係者は「『反・非・嫌安倍』が思った以上だ。安倍政権の『終わりの始まり』が早まるかもしれない」と懸念する。

▼いばらの道

 石破を支援したベテラン議員は「安倍首相が地方票で圧勝していたら、自民党が有権者から見捨てられるところだった」と安堵(あんど)した。

 首相側にとっては石破を封じ込めるどころか、「ポスト安倍」としての存在感が増す結果となった。首相を支援した党幹部は「石破氏を大事にしてあげないといけない」と石破や周辺を閣僚などで処遇して取り込む必要を口にする。

 30日には、与野党が激突する沖縄知事選が投開票を迎える。来年は統一地方選や参院選、消費税増税など政治日程がめじろ押しだ。党内からは早くも「選挙の顔」として疑問視する議員も出ている。

 「平成のその先の時代に向かって、新しい国造りに取り組む」。安倍は20日の記者会見でいつものフレーズを口にし、今後3年間、宿願の憲法改正、社会保障改革、外交を旗印に掲げて取り組み、求心力を維持する姿勢を強調。自身の政権運営の行く末を見通すようにこう語った。「いずれも実現は容易なことではない。いばらの道であります」

 =敬称略

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 連続3選を決めた安倍晋三首相は歴代最長の長期政権を視野に入れた。「安倍離れ」が浮き彫りになる中、綱渡りとなる政権運営を展望する。

=2018/09/21付 西日本新聞朝刊=

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