「教育無償化」財源は? 各党大合唱、記述あいまい マニフェストの理念形骸化

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 衆院選で、ほぼ全ての党が掲げる「教育無償化」。安倍晋三首相が衆院解散の「大義」の一つとして、消費税率10%への引き上げに伴う増収分を「人づくり革命」に充てると表明したことに端を発する。ただ各党の公約を見ると、財源や制度設計はあいまいなものが多い。美辞麗句ではなく、実行可能性のある政策の提示を目指した「マニフェスト(政権公約)」の理念は形骸化しつつある。

 幼児教育について、自民党は2020年度までに全ての3~5歳児と、低所得世帯の0~2歳児の無償化を掲げる。その他の各党も表現は異なるが方向性は変わらない。大学や専門学校などの高等教育については、与野党とも給付型奨学金や授業料減免の拡充を図ることで、無償化を目指すとしている。

 投票率の高い高齢者に手厚い施策を訴え、「シルバー民主主義」と呼ばれた従来の選挙に比べ、若者世代を意識した内容といえる。

 問題は財源だ。政府の試算では、高等教育無償化には年間3兆7千億円、幼児教育無償化には年間8千億~1兆2千億円程度かかる。自民や公明党は消費増税の一部を充当する考えだが、国の借金が1千兆円を超える中、「将来世代にツケを回す」との批判が根強い。

 希望の党や共産党などが掲げる大企業への課税、日本維新の会が主張する公務員の人件費削減も「皮算用」の感が拭えない。

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 かつて選挙の公約といえば、耳に優しい話が並ぶ「口約束」にすぎず、事後検証もできないとの批判があった。そうした反省から00年代以降、政策実現の期限や数値目標、財源などを盛り込んだマニフェストの充実を、各党が選挙のたびに競い合うようになった。

 ただ、09年に政権交代を果たした民主党政権が「マニフェスト違反」を批判されて以来、急速に「熱意」は冷めている。マニフェストという名称を今回使っているのは公明と維新だけ。「大盤振る舞い」を許すムードにもつながっている。

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 3歳の長女を保育園に預ける福岡市東区の看護師の女性(35)は「保育料が無料になればうれしいが、本当に全ての人をただにする必要があるのか」といぶかる。

 既に生活困窮世帯については納税額に応じた保育料の減免措置がある。一律の無償化は「選挙の時だけ都合の良いことを言っている」と感じるという。「保育の受け皿拡大など、本当に働きたい人が安心して働ける環境を整えることが先ではないでしょうか」

 一方、福岡県内の公立高校の男性教諭(41)は「収入による線引き」に疑問を投げ掛ける。

 自民が掲げる高等教育無償化の対象は「真に必要な家庭に限り」としており、生活保護世帯などを念頭に置いているとみられる。一方、一定の年収があっても、要介護者の有無など家庭環境によって「見えない貧困」は存在する。

 各党の公約からは、実情を踏まえた制度設計はうかがえない。男性教諭は「真の貧困が見えているとは思えない」と語る。

=2017/10/20付 西日本新聞朝刊=

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