「佐賀よかとこ」発信中 県、人口減歯止めへアイデア [佐賀県]

福岡県から自然豊かな佐賀市富士町麻那古に移住した村上さん家族
福岡県から自然豊かな佐賀市富士町麻那古に移住した村上さん家族
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県庁来賓室の「ガチャガチャ」でおにぎり模型を当てた間寛平さん。ガチャガチャも情報発信のツールだ
県庁来賓室の「ガチャガチャ」でおにぎり模型を当てた間寛平さん。ガチャガチャも情報発信のツールだ
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 「佐賀に来ても何もなかよ、ではないですよ」-。山口祥義知事は2015年1月の就任以来、自虐的な県民意識を変えようと呼び掛けている。県の魅力を再認識し、発信する狙いは人口減対策だ。国立社会保障・人口問題研究所は、このまま何も対策を取らないと、今の県人口約83万人は40年に68万人、60年に54万人に減ると試算している。どうすれば歯止めをかけられるのか-。県の取り組みを取材した。

 「自然の中で地域に見守られながら子育てしたいと思い、移住を決めました」。佐賀市中心部から車で約1時間。緑に囲まれた同市富士町麻那古の古民家を訪ねると、村上嘉子さん(36)が笑顔で迎えてくれた。

 福岡県筑紫野市でマンションに暮らしていた村上さん一家が移住したのは08年4月。マンションでは隣室や階下への音漏れが気になったが、跳びはねる長男の武生君(13)に「静かに」とは言いたくなかった。

 そんな時、新聞広告の富士町の古民家に目がとまり現地に足を運んだ。「ここだ」。高校教諭の夫(46)は今、福岡県久留米市まで車と列車を乗り継いで通勤している。それでも苦にならないほど、田舎暮らしの魅力に満足しているという。

 満天の星空、夏は川遊び、季節ごとの祭り-。4人の子どもは野山を駆け回り、伸び伸びと育っている。近所のお年寄りは野菜の煮物をお裾分けしてくれる。「お母さんのより、おいしい」。うれしそうに話す武生君の顔を見て、決断は正しかったと思っている。

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 県は人口減対策で15年7月、県内での定住、移住を促進する「さが創生推進課」を新設。福岡市と東京に郷里に戻ってくる「Uターン」、出身者ではないが佐賀に住んでみようかという「Iターン」の希望者の相談窓口も設けた。

 県のホームページでは、自然豊かな環境で暮らす村上さんたち移住者の生活も紹介。福岡の新聞やテレビでの情報発信も機会を増やした。成果はあり、県や市町の支援を受けて県内に移住した人は15年度253人、16年度367人と、少しずつ増加している。

 ただ、移住者全員が“ばら色”の生活ばかりというわけではない。田舎は交通や買い物、教育、医療など、何かと不足も伴う。村上さんは地域になじめずに再び引っ越した人の話も耳にし「密な人間関係や少しの不便を楽しめないのなら勧められない」と話す。

 県は本年度から、移住を考える人から希望する住環境を聞き、空き家や学校、商業施設を案内し「移住後」をイメージしてもらう取り組みを始める。

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 新聞やテレビ、インターネットに頼らない情報発信ツールもある。

 国内外の訪問客を迎える県庁の来賓室はこの1年で様変わりした。棚や壁に佐賀錦や肥前ビードロ、幕末・維新に活躍した「佐賀七賢人」のパネルなどが所狭しと並ぶ。以前のコンセプトだった「木のぬくもりのあるシンプルな空間」の面影はもはやない。

 3月に来賓室を訪れたタレントの間寛平さんは、カプセル入りのおもちゃを出す機械「ガチャガチャ」で、おにぎりの模型を引き当てて「何これ」。山口知事がノリとコメが県名産と紹介すると「へー」と納得した様子だった。

 「影響力のある人たちにユーモアを交えて佐賀の魅力を発信してもらえれば」と県秘書課は狙いを話す。

 地域の盛衰に直結する人口減対策は、未来を懸けた激しい自治体間競争。息の長いアイデア勝負がこれからも続く。

=2017/05/18付 西日本新聞朝刊=

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