基山の魅力を深く、楽しく 宿坊体験や「寺ヨガ」 県と町が新観光ツアー試行 [佐賀県]

蔵人の案内で仕込み真っ最中の酒蔵を見学
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二階寺の本堂で行われた写経、写仏体験
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写真を撮る心構えを話すエバレット・ブラウンさん(手前)
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 県内の観光といえば、唐津くんちや熱気球大会、祐徳稲荷神社、吉野ケ里遺跡などが浮かぶものの、「基山」をイメージする人は少なかろう。その基山町で新たな観光事業を立ち上げようと、県と町が今月、三つのモニターツアーを実施した。参加者たちは基山のディープな魅力を体験し、歓声を上げた。

●「基山ってすごい」

 地酒「基峰鶴」で知られる基山商店(基山町宮浦)。1日観光ツアーに参加した女性たちが訪れた。テーブルに地元菓子店主が腕を振るったスイーツが並ぶ。看板商品の「佐賀ん酒びたしカステラ」のほか、特製の桜もちなどが季節感を演出。ヨーロッパのコンテストで入賞した吟醸酒もあり、参加者は杯を交わし、にぎやかな笑顔が広がった。

 「通り過ぎるだけの町だと思っていたけど、基山ってすごい」

 「水」をテーマにしたツアーは、滝でくんだ水を使ったデトックスウオーター作りからスタート。昨年開山1300年を迎えた同町園部の大興善寺の見学や、本堂での「寺ヨガ」体験、精進料理の昼食を終え、基山の水で発酵中の日本酒のタンクを前に、蔵人の解説を聞いた。悪天候で見送られたが水にまつわる神社巡りも予定されていた。

 福岡都市圏にほど近い基山で、寺や水の「パワー」を感じ、参加者たちは心を奪われた様子だった。

●ディープな2日間

 宮浦の山中にある天台宗の二階寺では1泊2日の宿坊体験があった。今回のモニターツアーの企画を委託された地域づくりコンサルタントの一般社団法人「九州のムラ」(福岡県宗像市)の養父信夫代表理事(55)は「ここではディープなものを体験してもらおうと思っているんです」。

 40を超える仏像を祭り、滝行をする養老の滝や、護摩だきをする護摩堂を備えた寺でのテーマは「六根清浄」。視覚や嗅覚などの五感と、第六感とも言える意識の根幹を清らかにするという意味だ。

 「寺は祈りの場であることが第一だが、何かを求める人には間口を開けるのが仏教。基山に来ていただく手伝いができれば」と吉田敦晃住職(43)。境内を歩きながら寺の歴史や、どんな仏像なのかを分かりやすく解説すると、参加者たちは興味津々だ。

 映画「ラストサムライ」でも使われたという吉田住職の声明が流れる中、参加者は写経や写仏に集中。翌朝、護摩堂で自分が書いたものをたき上げて「悩みや苦しみを焼き尽くす」という体験をした。

 宿坊体験だけに、食事は精進料理。朝はおかゆをいただき、座禅や寺ヨガに参加。嗅覚を研ぎ澄ませ、自然の香りを使った練り香水作りにも挑戦した。

 「座禅をしていると古い記憶がよみがえってきた」「もっと長くいたいと感じた」「素材を生かした精進料理が心に残った」。すっきりした表情からは、日頃のストレスから解放されて心身をリセットした様子が感じられた。

●町民から情報発信

 地元の人だからこそ知っている基山の魅力を発信しようとフォトツアーも開かれた。指導するのはアメリカ人写真家のエバレット・ブラウンさん(58)。元EPA通信社日本支局長で1988年から日本に定住。文化論についての執筆、講演活動をしながら、日本文化を世界に発信している。

 本格的なカメラを手にしたシニア世代を中心に集まった参加者を前に「視界の中心ではなく、目のわきから飛び込んでくるものを大切にしてください」と、ブラウンさんは“極意”を伝授する。町内を散策して撮影された写真は、思いがけない風景の中に、基山の生活や歴史が切り取られていた。趣味の写真歴は50年という参加者は「目からうろこが落ちたような体験。いろんな視点があると教えられた」と感慨深げだ。

 「自分の好きなふるさとを自分で探って、家族や友人に伝えると、またふるさとへの思いが深くなる」とブラウンさん。

 町はツアーの成果を検証し、今後の観光開発に生かしたい考え。「観光基山」が手探りで始まった。

=2018/04/05付 西日本新聞朝刊=

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