「まじですか」45歳記者、機動隊に入隊してみたら… 限界超える恐怖の筋トレ [佐賀県]

盾を持って駆け足訓練に挑戦する記者(前列中央)
盾を持って駆け足訓練に挑戦する記者(前列中央)
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高さ11メートルの壁。下を見ると恐怖心が湧く
高さ11メートルの壁。下を見ると恐怖心が湧く
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両手をつなぎ、ジャンプしながらのスクワット。隊員の励ましを受けながら、ただただ耐える
両手をつなぎ、ジャンプしながらのスクワット。隊員の励ましを受けながら、ただただ耐える
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 「今度、機動隊の体験入隊があるんですけど」。ある日、佐賀総局でデスク業務をしていると県警担当の女性記者が話し掛けてきた。聞くと、県警が報道機関を対象に企画したらしい。「他社は20代の若手が出ます。私は参加しません」と記者。そのひと言に心が動いた。45歳。立派な中年だが、体力的に若いもんに負ける気はしない。久々に現場の空気も吸いたい。よーし、それなら私が参加しよう。「まじですか」と困惑する若手たちを尻目にいざ出動-。

 2月下旬、機動隊(佐賀市八丁畷町)が入る建物の1室に、私を含め、新聞とテレビの記者計4人が集合した。事前に聞かされていた通り、他の3人は20代。私1人が場違いな感じは否めない。

 機動隊は1956年に発足。約80人が所属し、70%が30歳未満という。「機動隊は治安維持の最後の砦(とりで)。隊員は筋肉もりもりの体育会系のイメージしかないだろうが、気は優しくて力持ちということを知ってほしい」と山崎幸男機動隊長(現警備2課長)。

 早速、機動隊の装備に着替えた。ヘルメットに丈夫な靴、そして野球のキャッチャーが身に着けるようなプロテクターを装着。重さは約6キロあり、慣れるまで動きづらい。建物を出て、訓練をする広場に機動隊員たちと整列した。

 その場で記者に防御盾が渡された。重さ5・5キロ。投石などから身を守る、隊員たちの大切な相棒だ。

 まずは駆け足訓練。盾を片手に機動隊の建物の外周(1周約150メートル)を掛け声に合わせて走る。装備も含め約11・5キロの重みを身に着け、15周ほど、約2キロを駆け抜けた。途中、他社の記者が次々脱落していったが、フルマラソンを4回完走した経験もあり、息が上がることはなかった。

 再び整列し、盾を使った防御方法の訓練。投石などを想定し、盾を頭上に掲げたまま静止する動作では、時間がたつにつれて腕がぷるぷる震える。早く下ろしたい。1分ほどだったが、とても時間が長く思えた。

   ×    ×

 続いてレンジャー訓練。11メートルの高さまでロープを使ってほぼ垂直の壁をよじ登る。万一のために命綱を取り付けた。軍手をしていたが、隊員から「素手の方が滑らない」とのアドバイスを受けて外した。下から見上げると絶壁でしかない。もともと高所恐怖症だ。とにかく下を見ずに一気に駆け上がる、と心に決めた。

 順番がきた。気持ちを集中し、両脚にすべての力を注いだ。見守る隊員からも「頑張れ」と声がかかる。止まったらだめだ。心の中でそう叫び、歩を進めた。

 しかし残り2、3メートル、踏ん張りがきかない。もう限界と心が折れかけたが、ここで下りるわけにもいかない。最後の力を振り絞り、何とか登り切った。よく見ると左手の甲の4カ所から血がにじんでいた。ロープですり切れたようだ。必死になっていたのでその時は全く痛みも感じなかった。

   ×    ×

 全身の力を使い果たした後、待ち構えていたのは恐怖の筋トレだった。

 隊員たちと輪になり、まずは腕立て伏せ50回。30回まではペースについていけたが、それ以降、両腕に力が入らず、体を支えられない。隣の隊員が「もう少し」と一生懸命に励ましてくれたがどうにもならない。

 続いて腹筋。50回のはずだが、数をごまかされ、結局80回ほどやるはめに。

 最後はスクワット50回。隊員と手をつなぎ、ジャンプしながらスクワットを繰り返す。30回過ぎて限界を迎えても、両手をつないでいるから途中で抜けることができない。妙な連帯感は生まれたのだが、ただただ地獄。終わったときはしばらく立てなかった。

 訓練が終わり、意見交換会。きつかったが、「まだまだやれる」というある程度の達成感に浸っていた。ところが、「今日の内容は普段の訓練と比べるとどの程度か」との質問に、機動隊幹部は「3割程度」。となると、隊員たちは日々、この3倍を超えるきつい訓練をこなしているわけだ。

 いざという時のため、過酷な訓練に励む隊員たちに脱帽するとともに、つらいときに必死に励ます、仲間を思う彼らの人間性に触れることができ、すがすがしい気持ちになった。

=2018/04/12付 西日本新聞朝刊=

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