55年の歴史に幕、喫茶店「ナポレオン」 涙をのみ立ち退き 最終日には大勢の客 唐津市 [佐賀県]

閉店後、名残惜しそうに店内を眺める前山さん。棚の上のスピーカーは開店当初からの物だという
閉店後、名残惜しそうに店内を眺める前山さん。棚の上のスピーカーは開店当初からの物だという
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 唐津市中心部の京町商店街で55年営業を続けてきた喫茶店「ナポレオン」が10日、閉店した。周辺の再開発事業で立ち退きを求められていた。最終日は大勢の常連客が集まり、こだわりのコーヒーを楽しんだ。マスターの前山正克さん(82)は「お客さんに喜ばれて楽しかった。できれば新たな店舗で再出発したい」と話している。

 前山さんは店に近い同市本町出身。市内の高校を卒業後、福岡市・中洲のバーで3年間修業した。実は酒が苦手でコーヒーが好きだった前山さん。バーではコーヒーの入れ方を覚え、知り合いの喫茶店にも通い見よう見まねでやり方を学んだという。

 ナポレオンを開いたのは1963年。店内はカウンターとテーブルで約20席あり、京町や近くの呉服町周辺はブティックなどの買い物客でにぎわっていた。天井をトンネルのように丸く装飾した内装で、客から「船の中にいるようだ」と言われたという。コーヒーは豆の種類や客の好みに合わせてひき方を変え、味を追求する一方「店を閉めて常連客たちとドライブに行くこともあった」と振り返る。

 90年代に入ると、市民が福岡市に買い物に行くようになり、周辺が少しずつ活気を失っていった。それでも趣味のカメラで撮影した花の写真を飾ったり、自ら育てた花を生けたり、心地よい雰囲気づくりに努め、営業を続けてきた。

 しかし今年4月、周辺の再開発が決定。前山さんは「町の活性化のためなら」と涙をのんで立ち退きを了承した。再開発地で営業したい気持ちもあったが、再開発の事業者からは具体的な交渉はなかったという。

 正月以外は休まなかったという前山さんは「この店が好きだった。続ける夢を今も見る」と名残惜しそうに話した。

 再開発を巡っては、ナポレオンの近くで20年間営業した駄菓子店「からつ だがし屋さん」も3月に立ち退いた。経営していた菓子問屋社長の井上誠二さん(56)は「もう一度、商店街に子どもたちの笑い声を響かせたい」と再開を検討している。

=2018/06/12付 西日本新聞朝刊=

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