なぜ?動物園と水族館がない佐賀 理由を探ってみた [佐賀県]

どんぐり村でウマに餌をあげる子どもたち
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有明海の生き物が観察できる鹿島市干潟展望館
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 お盆が明けて学校の夏休みは残りわずか。子どもが好きなレジャー施設の定番といえば動物園と水族館が思い浮かぶが、佐賀県内には存在しない。動物園や水族館を掲げる施設がいずれもないのは九州・沖縄で佐賀だけで、その理由を探った。

 県内の観光案内図を広げたが、動物園や水族館と呼ばれる施設は見当たらない。「県民から『どこにあるのか』と問い合わせはあるが、小動物や海の生き物が見られる類似施設を紹介するしかない」。県観光連盟の担当者は苦笑いする。

 なぜないのか。担当者は「佐賀は(九州で最も)人口が少なく、集客が見込めないのではないか」と指摘。さらに「隣県の福岡と長崎に1時間ほどで行ける施設がいくつもあり、県内の需要が高まらなかったのだろう」と推測する。

 確かに、福岡県では福岡市動物園や大牟田市動物園、マリンワールド海の中道(福岡市)が存在。長崎県には長崎バイオパーク(西海市)や九十九島水族館海きらら(佐世保市)がある。どこも佐賀から日帰りで十分に行ける距離だ。

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 動物園と水族館は、博物館法で定める「博物館」の一種だが、それぞれの定義は「特にない」(文部科学省)ため、正確な数は分からない。ただ、日本動物園水族館協会(JAZA)には91の動物園と60の水族館が所属し、近年はほぼ横ばい。全国的にみても動物園と水族館の経営には難しさがあるという。

 動物園は公営の割合が多く、「娯楽」の要素に加えて住民への「自然環境教育」の役割があり、誰でも気軽に行けるように入園料は低料金が定着している。種の保存や繁殖にも力を入れ、動物の体調を管理するために多額の光熱費や医療費がかかるため、収益を上げるのが難しい。

 福岡市動物園は、年間運営費約10億円に対し、入園料や駐車場代などの売り上げは約2億5千万円にとどまる。佐藤広明園長は「自治体の体力がないと運営できない」と語る。近年、ワシントン条約の取引規制で海外からの動物の輸入が難しくなり、開業のハードルはさらに高くなった。

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 一方、水族館は民営が6~7割を占める。巨大な水槽内の温度管理で電気代などのコストがかかり、事業者は独自の展示や催しで集客に努める。JAZA事務局は「レストランや宿泊などの付帯施設を整備して収益を図る事例もある」と明かす。

 マリンワールド海の中道では入場者がピーク時の半分の年間70万人前後まで落ち込んでいたが、昨年4月にリニューアルオープンした結果、108万人まで回復した。中村雅之館長は「リピーターを増やすため、新しい魅力を常に発信し続けるしかない」と話す。

 収益を生み出すためには新たな投資が求められ、その回収には持続的な観光需要が欠かせない。

 佐賀県の人口は約82万人で、九州7県で唯一、100万人を下回り、福岡県の5分の1に届かない。

 佐賀大農学部の徳田誠准教授(生態学)は佐賀に未整備の理由について「人口が少ない地域は入場料を高く設定しないと採算が取れず、民間は参入をためらうのだろう」と指摘。「自治体が運営するにも予算を割く余裕がなく、よほどの理解が必要」としている。

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■人気の類似施設、県内にも

 県内に動物園や水族館はないが、小動物や海の生き物を観察できる類似の人気スポットはある。

 豊かな自然が広がる佐賀市三瀬村杠(ゆずりは)の観光牧場「どんぐり村」(約87万平方メートル)。ウマやヤギなど10種類、約300もの動物がいる。今月上旬に来園した福岡市中央区の会社員林晃代さん(46)は「自然に囲まれてゆっくりくつろげる」と笑顔で話した。

 鹿島市音成の「市干潟展望館」には水槽約20個が並び、有明海に生息するワラスボやムツゴロウ、トビハゼを観察できる。スタッフの北村瞳さん(34)によると、地元から「有明海に近い鹿島で干潟の生き物を学べる施設がほしい」と声が上がり、かつてのレストランを改修し、2010年にオープン。同市は19年4月、展望館の近くに「市干潟交流館」を開館し、展示の規模を拡大する予定。

 武雄市西川登町の遊園地「武雄・嬉野メルヘン村」では、リスやウサギなどと触れあえる。

 唐津市鎮西町の波戸岬には「玄海海中展望塔」がある。海中の展望室の窓から、天然の魚が遊泳する様子を眺められる。

=2018/08/23付 西日本新聞朝刊=

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