虐待受けた経験語り合う 「仲間の存在、支えに」 佐賀市で月1回集い 心を整理、回復目指す [佐賀県]

 子どもの頃に虐待を受けた人が体験を語り合い、互いに支え合う「しょうりゅうのつどい」が毎月1回、佐賀市で開かれている。虐待被害者だった大人が集まる会は県内でも珍しいといい、発起人の龍文恵さん(仮名、40代女性)は「大人にも心の安全地帯が必要。経験を話すことで心を楽にして、傷を癒やすきっかけづくりができるのでは」と話している。

 「恐怖を思い出して、頭が痛い」「『俺の言うことは絶対だ』と逆ギレされた」-。8日、会には県内から支援者1人を含めて3人の女性が集まった。参加者は幼少期に保護者から虐待を受けたことがある。

 会話は世間話のように進み、雰囲気は明るい。しかし、それぞれの会話からは過去の苦しい経験や思い、虐待が原因で今なお続く不調などが伺える。3人は時に冗談を交えつつも真剣に耳を傾け、「困ったもんだね」「きつかったね」などと共感し合っていた。

 「虐待を受けている子どもには児童福祉の手があるが、大人にはなかった」と話す龍さん。4歳ごろから両親によって殴る蹴るの暴行や暴言を受けたり、食事を与えられなかったりするなどの虐待を受けていた。特に父親が怒って暴力を振るうときの般若のような表情は今でも鮮明だという。

 大人になってからも頻繁に過呼吸に陥り、自律神経失調症も患うなど仕事もままならない状況の中、精神科の受診などをきっかけに虐待被害が不調の一因と認識。大人向けの自助グループを探したが県内で見つからず、2015年5月に支援者の女性と「しょうりゅうのつどい」を立ち上げた。

 「子どもの頃は虐待を受ける状況が普通と思っていたが、それは間違いだった」と振り返る龍さん。「育った環境がその人の『普通』をつくり、虐待を受けた人が大人になって子を虐待するなど負の連鎖が続いてしまう。虐待をなくすためにも、大人へのアプローチは大切」と力説する。

 虐待された経験を持つ人は、心身の調子を崩す▽他人に対する不信感が芽生える▽子どもに愛情を持てず虐待してしまう▽自分を大切にできず自傷行為に走る-など、さまざまな問題を抱える。同じ体験をした人同士で被害について話して心を整理することで、回復につながるという。

 1年ほど前から通う県内の20代女性は「(被害について)話したい気持ちもあるが、周りの人から変な目で見られるのが嫌だった。でもここなら過去を知った上で話せる人がいて気が楽です」と語った。

 龍さんは「まずつらかったことを人に分かってもらうことが大切。同じ経験を持った人だからこそ理解し合える」と力を込める。「悩んでいる人は連絡してほしい。たとえ参加ができなくても、この会があることを知り、仲間がいることを心の支えにしてほしい」

=2018/09/13付 西日本新聞朝刊=

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