子育て支援切れ目なく 多胎児の母親を支援 さが多胎ネット準備会代表 [佐賀県]

子育て講座で母親たちと意見を交わす「さが多胎ネット準備会」代表の中村由美子さん
子育て講座で母親たちと意見を交わす「さが多胎ネット準備会」代表の中村由美子さん
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 「子育てする中でのストレス解消法を発表しあいましょう」。11月、佐賀市主催の子育て講座。講師の中村由美子さん(53)が双子や三つ子の乳児を育てる母親たち十数人に投げかけると、次々と答えが返ってきた。「子どもにアニメを見せている間に、お菓子づくりに没頭する」「子どもを夫に預けて友人とランチに行く」。それぞれ思いをはき出し、共有することが子育ての孤立を防ぐ第一歩だ。

 2人以上の赤ちゃんを同時に妊娠することを多胎妊娠という。県内では年間65組ほどの多胎児が誕生している。多胎妊娠は母体への負担が大きく妊娠初期から入院が必要になる。出産後も、子どもが同時期に病気を患いやすく、苦労が尽きない。

 「多胎児の母親は似た境遇のママ友となかなか出会えず、悩みを抱え込みがちなんです」と中村さん。母親たちが毎月2回、佐賀市の交流施設に集まっておしゃべりしたり、子ども同士を遊ばせたりするサークル「グリンピース」を代表として運営する。

 サークル活動の実績が認められ、2年前から、メンバー以外も参加する子育て講座を佐賀市から委託されるようになった。本年度は年5回、講師を務めた。「同じ立場の母親と出会えた」という喜びの声とともに、仲間が増えている。2004年のサークル設立時は10家族ぐらいのメンバーでスタートしたが、現在は60家族ほどになった。

 中村さん自身も双子を産み育てた。26歳で妊娠。医師から「多胎妊娠だからリスクが高い」と告げられ、「そんなに大変なの」と頭が真っ白になった。出産が近づくとおなかの張りに苦しみ、産後は2人の子どもが交互に母乳を求めるので夜も眠れない日々が続いた。

 「子どもを育てられない自分なんて、この世にいない方がいいのではないか」。そんなマイナス思考にとらわれ、うつのような状態に。夜中でも子育てを手伝ってくれる夫と、「いつでも帰って来い」と電話口で励ましてくれる実家の父親に何とか救われた。「妊娠から出産、育児まで全てが2人分。家族全員が疲弊した」と振り返る。

 自らの子育てが一段落した39歳で立ち上げたサークルも15年目を迎えた。子育ての悩みを語り合うばかりでなく、その喜びも味わえるように、先月には、双子に着せるおそろいの服をファッショショー形式で紹介するイベントも初めて開いた。

 多胎児の母親たちのサークルは鳥栖市や伊万里市にも広がったものの、悩みを抱える母親たちに手を伸ばし切れていないと思う。多胎児の母親たちがどこにいるのか、連絡がなければ分からない。

 県内のサークルと手を組み、周産期の医療機関や行政の協力も得ながら、母親たちを支援する「さが多胎ネット」の準備会を設立。「平成」が終わって新たな元号となる来年5月の立ち上げを目指す。

 医療機関からの情報を受け、多胎児が生まれる前から母親の相談に乗り、出産後も育児に悩んで引きこもりがちな母親の家を訪ねて悩みを聞く活動を視野に入れる。「妊娠から子育ての最も大変な時期の『切れ目のない支援』をイメージしている」という。

=2018/12/03付 西日本新聞朝刊=

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