「三菱御殿」に“聖地詣で”続々 アニメ「ゾンビランド」舞台 老朽化で休館中 [佐賀県]

週末を中心に多くの見物客が訪れる旧三菱合資会社唐津支店本館
週末を中心に多くの見物客が訪れる旧三菱合資会社唐津支店本館
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「アニメの中そのままの風景」

 放送中のテレビアニメ「ゾンビランドサガ」の舞台となっている唐津市海岸通の「旧三菱合資会社唐津支店本館」(市歴史民俗資料館)が連日、ファンでにぎわっている。石炭産業で栄えた唐津を象徴するレトロな洋風建築は県の重要文化財にも指定され、建築物としての価値も高い。ただ、老朽化に伴い2003年から休館しており、足を運んでも屋内に入れない状態が続く。市民からは早期の修復や公開を求める声が出ている。

 今月15日の土曜日。資料館には朝からファンが続々と姿を見せた。熊本市の会社員、坂口和彦さん(28)は「『聖地』なので一度は来たかった。アニメの中そのままの風景ですね」と感激した様子。福岡県大木町から自転車で訪れた男性会社員(44)は「歴史ある建物なんですね。できれば中も見てみたい」と話した。

 アニメは、ゾンビになった少女たちが佐賀を救うため同館を拠点に奮闘する物語。サガテレビやTVQ九州放送などで10月から放送が始まると、ゆかりの地を巡る「聖地巡礼」のスポットとなり、唐津市教育委員会による11月25日の同館特別公開には千人以上が詰め掛けた。2日間の公開で来場者が300人にとどまった昨年を大きく上回ったという。

 近くに住む西元一重さん(68)は「週末を中心に数十人単位でファンが来ている。地元住民にとっても貴重な文化財なので、傷んでいる場所を修理して一般公開してほしい」と期待を込める。

明治後期の建築、15年前から休館

 同館は、石炭の輸出などを手掛けた三菱合資会社唐津出張所として明治後期の1908年に建てられた。木造2階建てで、三菱の建築顧問を務めていた唐津出身の建築家曽禰(そね)達蔵が設計に関与したとされる。72年に市の所有となり、79年から歴史民俗資料館として使われてきたが、ベランダなどの老朽化が進み、15年前から休館している。

 長引く休館には理由がある。にぎわいの拠点として、フェリーターミナルなどがある唐津東港への移築を市が検討してきたからだ。移築前に修理すれば二度手間になる可能性もあり、「小さな修理はしているが、大規模修理はしていない」(市文化振興課)という。

 ただ、市教育委員会の担当者は今月12日の市議会一般質問で2015年11月に現地を見た専門家の見解として「文化財としての価値を損なわずに移築することは非常に難しい」と述べ、移築に消極的な姿勢を示した。市は移築の可否を含め「早急に方向性を決める」としているが、議員からは「この間も建物の劣化が進んでいる。これまで何をしていたのか」と対応の遅れを批判する声が漏れた。

アニメ人気追い風に早期公開の機運を

 一方、市民レベルでは、アニメ人気を追い風に、建物への関心を高めてもらおうと模索する動きも出始めている。

 同市の市民団体「まちはミュージアムの会」は来年3月2日、同館をテーマにした交流会を開く。長崎市在住の建築家で芸術工学博士の中村享一さんと、アニメ制作のキーマンを招き、同館の建築的価値や歴史的背景、ゾンビランドサガの制作秘話などを語ってもらう予定だ。

 同会会長の河内野信恒さん(57)は「旧三菱合資会社唐津支店本館は長く休館になっていて市民に忘れられた存在になっている。建物への関心を高め、早期公開に向けた機運を盛り上げていきたい」と話している。

=2018/12/20付 西日本新聞朝刊=

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