焼き損ない集め陶磁器展 武雄市の陽光美術館 「いとをし かたやぶれもん」 陶芸家の挑戦心物語る [佐賀県]

窯出しするマイケル・マルティノさん。それまでの苦労が走馬灯のようによぎる
窯出しするマイケル・マルティノさん。それまでの苦労が走馬灯のようによぎる
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「かたやぶれもん」の花入れにガラスや古陶磁を組み合わせた鶴田さんの作品。首が傾いた初期伊万里の小徳利も金継ぎし魅力が増した
「かたやぶれもん」の花入れにガラスや古陶磁を組み合わせた鶴田さんの作品。首が傾いた初期伊万里の小徳利も金継ぎし魅力が増した
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古武雄の陶片から印花文を学ぶ綿島さん
古武雄の陶片から印花文を学ぶ綿島さん
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綿島さんの器をアナグマがひっかいた。登り窯に忍び込んだらしい
綿島さんの器をアナグマがひっかいた。登り窯に忍び込んだらしい
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盧真珠さんの、上部がへたった白磁の祭器
盧真珠さんの、上部がへたった白磁の祭器
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 武雄市武雄町の陽光美術館日本庭園慧洲園で8~11日、焼き損なった陶磁器の展示会「いとをし かたやぶれもん」が開かれる。全国でも珍しい失敗作の展示会。窯から思いがけない姿で出てきた器たちは、陶芸家たちの挑戦心を物語る。型にはまらない「かたやぶれもん」の生まれいずる所を求めて、出品作家たちを訪ねた。

 昨年暮れ、多久市多久町のマイケル・マルティノさん(51)は窯出しの真っ最中だった。穴窯から出てくる作品は完全無比のものもあれば、曲がっていたり、色がくすんでいたり。個性豊かだが、マルティノさんの表情は複雑だ。

 「土作りから3カ月がかりの仕事の結果だから。狙った色から大体外れて、窯出しのときは機嫌が悪くなりがちですね」

 出来損ないはすぐに割ってしまいたいが、1週間後に冷静に磨いてみると「おや」と思うことがある。「これはこれで味がある」

 特に大切にしているのが「いじめられっこ」のつぼ。窯の中で薪に当たって倒れ、溶け落ちた灰を剥いだ時に穴が開いた。何回か焼き直して、穴には木片を埋めて金継ぎもした。傷だらけの「かたやぶれもん」だが、愛着がある。

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 「かたやぶれもん」とは、今回の展示会のために出来た造語。同美術館の神谷直子学芸員が「図らずも完全な形にはならなかったけれど、どうしても捨てがたい特別なやきもの」として命名した。失敗作を指す「傷物」や風変わりな物を指す「ひょうげもん」など既存の呼び名ともひと味違う。

 「かたやぶれもんは、攻めの姿勢で作らんと出てこんとですよ」。有田町泉山の鶴田純久さん(60)は言う。例えば、茶人古田織部が最高傑作とたたえた桃山時代の古伊賀水指「破袋(やぶれぶくろ)」(国重要文化財)。底がゆがんで勢いよく破けているが、しっかり焼成したあとが見られ、野趣あふれる。鶴田さんは茶陶の精神「わび、さび」も「想定外を楽しむ考え方」と話す。不完全ゆえにいとおしく、傷を受け入れてこそ美しく映る。

 今展で鶴田さんは焼き締めの扁壺(へんこ)を出品。焼成時に損なった側面にガラスをはめ、金継ぎの蒔絵(まきえ)を施した。普段は見られない叩(たた)き技法の美しい波状文が鑑賞できる。

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 「かたやぶれもん」は、焼き物が誕生するまでをさまざまに伝える。

 武雄市若木町の工房で印花文の武雄焼を作る綿島康浩さん(47)は、登り窯を年3度ほど焚(た)く。電気やガスの窯に比べ焼成が安定しないが、「窯の中の雰囲気や出来事が景色を醸し出すから面白い」。窯の天井から小石が落ちたり、窯に忍び込んだアナグマにひっかき傷をつけられたり。

 想定外の仕上がりでも、なるべく大事に保管する。「仕事の手の跡が感じられる方が好き。師匠からも自分が作り出したものには責任を持てと教わりましたから」

 嬉野市嬉野町の盧真珠さん(45)は韓国出身。有田焼の祖李参平が発見した泉山の陶土を使い、白磁の祭器の作陶に挑んだ。試作を重ねる中で上の皿がへたったが、「捨てられず取っておいた」。肥前の陶土で試行錯誤を重ねた陶工たちとの対話が込められている。

 「かたやぶれもん」の源は、作り手たちの挑戦そのもの。マルティノさんいわく、英語に訳せば「Thinking out of the box」(既成概念を打ち破る)だそうだ。

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 「いとをし かたやぶれもん」は「肥前やきもの圏 群雄割拠!春の陣」と同時開催。期間中、鶴田さんによる金継ぎ講座もある。入場料600円。同美術館=0954(20)1187。

=2019/02/08付 西日本新聞朝刊=

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