「労働開国」熟議の時

ベトナム人技能実習生からあなたの特命取材班に届いたSOS
ベトナム人技能実習生からあなたの特命取材班に届いたSOS
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 「会社をいじめられましたので、今は思い病気になりました。でもも直(す)ぐくびになるかもしれません」。誤字交じりのメッセージが先日、本紙「あなたの特命取材班」に無料通信アプリLINE(ライン)で届いた。長崎県内で暮らすベトナム人技能実習生の女性からのSOSだった。

 有休も取らせてくれず、労働基準監督署に相談したが、職員はベトナム語が話せず十分な対応が受けられなかったこと。通報が上司にばれて帰国を迫られていることも記されていた。

 急増する外国人労働者との共生をテーマに本紙が2年前から展開してきたキャンペーン報道「新 移民時代」の取材で、似たような話を幾度も耳にしてきた。

 日本で技能を身に付け帰国してもらう建前の陰で、低賃金の単純労働を強いる技能実習制度の現実。日本語習得より労働を目的とした出稼ぎ留学生の実態。キャンペーンで取り上げたのは、事実上の労働移民がいるのに、いないふりをして対策を放置してきた政府の「移民ネグレクト」が生んだひずみだった。

 21日、衆院法務委員会で実質審議入りした入管難民法改正案は、こうした流れに終止符を打てるのか。

 すでに120万人を超す外国人労働者が日本社会を支えている現実を直視し、「労働開国」を国会で論じる好機のはずだ。外国人労働者への社会保障や教育も含め、日本社会の在り方を変えることにつながる重大な問題だ。

 だが、安倍晋三首相は「いわゆる移民政策ではない」と繰り返すことで、骨太の議論を封じているように見える。人手不足が待ったなしであることは九州の現場を歩いた取材班の肌感覚と重なるが、来年4月施行を急ぐあまり制度設計は生煮え。会期末までの3週間足らずで十分な審議を尽くせるとは思えない。国会だけでなく、家庭や職場、学校、地域で国民が意見を交わす必要もある。

 政府は「移民政策」であることを正面から認める。与野党も、駆け引きではなく労働開国の在り方を論じる。今後50年、百年先の「国の在り方」を見据えた議論をすべき時だ。
(「新 移民時代」取材班キャップ 坂本信博)
=2018/11/22付 西日本新聞朝刊=

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