「共謀罪」審議 政府は誠実な説明尽くせ

 数多くの懸念や疑問を抱えた法案である。国会で徹底的に審議すべきだ。犯罪を計画段階で処罰する「共謀罪」の趣旨を盛り込んだ「テロ等準備罪」を新設する組織犯罪処罰法改正案が衆院本会議で審議入りした。

 「心の内」を処罰するとして過去3回も廃案となった共謀罪とは何が違うのか。政府は今回、テロ対策を前面に掲げる。安倍晋三首相は衆院本会議で「世界各国でテロが続発する中、3年後には東京五輪・パラリンピックを控え、テロ対策に万全を期すことは開催国の責務だ」と強調した。

 共謀罪だと印象が悪いが、五輪に向けてテロ犯罪を計画段階で処罰すると言えばもっともらしく聞こえるだろう-そんな思惑だとしたら安直に過ぎる。

 対象犯罪は共謀罪段階の676は多過ぎるとして、277に絞られた。それでも改正対象には商標法や特許法、労働基準法、著作権法などテロとはおよそ結び付きにくい法律がなお多く含まれる。

 適用対象は共謀罪の単なる「団体」から「テロリズム集団その他の組織的犯罪集団」に変えた。なのに、法案にテロリズムの規定はない。そもそも政府の当初案にテロの文言がなかったため、泥縄式に付け加えるお粗末ぶりだった。

 金田勝年法相が国会答弁や記者会見で、しばしば立ち往生するほど曖昧さが尽きない法案だ。捜査当局が恣意(しい)的に運用して一般の国民を適用対象とする恐れは一切ないと本当に断言できるのか。

 「テロ等」「その他の」は何を意味するのだろう。民進党の逢坂誠二氏は「国民の恒常的監視が前提の法律であり、誰でも犯罪集団の構成員とみなし得る犯罪を創設すべきではない」と指摘した。

 実際の犯罪で具体的な被害や危険が生じてから罪に問う刑法の例外として、計画段階を対象にした準備罪や予備罪などが既にある。それでは何が足りないのか。

 政府はさまざまな論点に向き合って誠実に説明を尽くすべきだ。テロ対策を名目に市民社会を萎縮させる法案であれば不要である。


=2017/04/08付 西日本新聞朝刊=

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