英国総選挙へ 建設的論戦で分断修復を

 英国のメイ首相が欧州連合(EU)との離脱交渉を前に、下院を解散して総選挙を前倒しで実施すると表明した。下院はこの方針を了承し、英国では6月8日に総選挙が行われることになった。

 英国では昨年6月の国民投票でEUからの離脱票が残留票を上回り、離脱が決まった。残留を主張していた与党・保守党のキャメロン首相は辞任し、後継のメイ首相が離脱方針を検討してきた。

 メイ首相は今年1月の演説で、移民の流入制限を優先し、無関税の欧州単一市場からの脱退も辞さない「強硬離脱」の方針を表明した。これに対し、野党・労働党や与党内の「穏健離脱」派から異論が上がり、さらには残留にこだわる政党も批判を強めていた。

 メイ首相は総選挙で大勝することによって、国民から「強硬離脱」方針への信任を取り付け、政権の足場を固めた上で、EUとの交渉に臨むシナリオを描いているようだ。世論調査での高い支持率がメイ首相の自信を支えている。

 しかし、選挙で保守党が伸び悩めば「強硬離脱」方針の見直しを迫られよう。さらに敗北すれば、残留派が勢いを取り戻し、英国の混迷は一段と深まる。総選挙はリスクの大きい賭けともいえる。

 昨年の国民投票では、離脱派が事実に基づかない主張で有権者をあおるなど、民主主義の成熟した英国社会とは思えないほど混乱した論戦が繰り広げられた。

 今回の総選挙を通じ、与党も野党も、英国とEUとの関係についてどのような将来像を描くのか、国民に対し誠実に提示すべきだ。英国では国民投票の後遺症で離脱派と残留派の亀裂が深まり、残留派の多いスコットランドでは独立論も再燃している。建設的な論戦で問題点を整理し、英国の分断を修復する契機としてもらいたい。

 英国とEUとの交渉期間は2年と定められている。英国の混迷が長引けば、交渉が時間切れとなって世界経済が混乱する恐れも強まる。今度は落ち着いた政策論議で、英国とEUの双方にとって最善の着地点を見いだしてほしい。


=2017/04/21付 西日本新聞朝刊=

西日本新聞のイチオシ [PR]

西日本新聞のイチオシ [PR]