大学の軍事研究 「痛恨の教訓」を忘れずに

 科学者を代表する組織「日本学術会議」が、軍事研究に関する新たな声明を総会で発表した。

 新声明は、軍事研究との決別を宣言した過去2度の声明を「継承する」と明記している。

 大学と軍事の距離がなし崩し的に縮まる現状に一定の歯止めをかける声明として評価したい。

 防衛省は2015年度、軍事応用が可能な基礎研究を大学などから公募して助成する「安全保障技術研究推進制度」を創設した。

 予算規模は当初の3億円から本年度は110億円に膨らんだ。研究費の枯渇に苦しむ研究者には魅力的な制度に違いない。これにどう向き合うのか。学術会議は約1年をかけて議論した。

 新声明は、健全な学術の発展には「研究の自主性・自律性」と「研究成果の公開性」を担保する必要があると指摘する。

 その上で、防衛省の公募制度については「政府による介入が著しく、問題が多い」と警鐘を鳴らした。軍事的とみなされる可能性のある研究について、大学や研究機関が適切かどうか審査する制度を設けることも求めた。

 大学などに主体的、自律的な判断を促す妥当な提言だろう。

 長崎大は今月、この制度への応募を自粛するよう教職員に通知した。同様の見解を示す大学は少なくない。軍事に関わることへの警戒感は、学術界に広く共有されているとみることができよう。

 一方で、基礎研究を軍事と民生で区分することは難しいという声があるのは事実だ。軍事研究が民生に活用された事例も数多い。また、軍事研究の中でも「自衛のための研究は認められる」という意見は学術会議の中にもある。

 だが、野放図な軍学共同の拡大は許されることではない。多くの科学者が先の戦争に協力した。1950年と67年の2度の声明には痛恨の反省が込められていることを忘れてはならない。

 科学は戦争の道具にもなり得る。その教訓から目を背けず、軍事と学術の適切な関係について関心を持ち続けていきたい。


=2017/04/22付 西日本新聞朝刊=

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