「共謀罪」衆院通過 「良識の府」で徹底審議を

 国民の懸念や疑問は解消されていない。にもかかわらず、法務委員会に続いて本会議もまた、野党の反対を押し切っての採決強行だった。衆院は「言論の府」の看板を自ら下ろしてしまったのか。

 「共謀罪」の趣旨を盛り込んだ「テロ等準備罪」を新設する組織犯罪処罰法改正案が衆院本会議で自民、公明の与党と日本維新の会の賛成多数で可決された。

 不安定な答弁を続ける金田勝年法相をはじめ質問に正面から向き合わない政府、30時間を費やしたから審議は尽くしたと言い張る与党、同調した維新にはそれぞれ重大な責任がある。

 過去3回も廃案になった共謀罪とは本質的に何が違うのか。適用対象を「組織的犯罪集団」と規定し、犯罪の「準備行為」を構成要件にすると政府は言う。だが、いずれも定義は曖昧で、政府答弁すら二転三転した。一般市民が対象になる疑念は拭えないままだ。

 「内心」を取り締まるために、捜査当局による監視が強まる恐れもある。安倍晋三首相は東京五輪に向けたテロ対策と強調するが、テロとは無関係と思われる犯罪まで対象に含まれる。極めて不十分な衆院審議で少なくともはっきりしたのは市民社会を萎縮させかねない法案-ということだ。

 政府は国連総会で採択された国際組織犯罪防止条約の締結にも成立が必要と主張する。野党も条約には賛成だが、現行法で締結可能だという。どちらが正しいのか。

 条約の目的はテロ対策ではなく、マフィアによる国境を越えた薬物や銃器の不正取引に絡むマネーロンダリング(資金洗浄)などの防止だとの指摘もある。そうだとすれば「テロ対策」という政府の主張との整合性も問われよう。

 共同通信社の最新世論調査によると、「政府の説明が十分と思わない」は8割近くに及ぶ。法案の賛否は拮抗(きっこう)しているが、国民は政府の説明責任を問うているのだ。

 法案審議の舞台は参院へ移る。まさに「良識の府」「再考の府」の出番である。今度こそ国民が納得するまで審議を尽くすべきだ。


=2017/05/24付 西日本新聞朝刊=

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