「共謀罪」法案 まだ採決の時期ではない

 「共謀罪」の趣旨を盛り込んだ組織犯罪処罰法改正案について、自民党は審議中の参院法務委員会で今週中の採決を民進党に提案した。しかし審議は深まっていない。まだ採決の時期ではない。

 法務委は先週までに参考人質疑を除き16時間審議しており、与党が参院での目標とする20時間に今週で達するというのが採決提案の理由だ。通常国会の会期末が18日に迫っている事情も大きい。

 審議は費やした時間ではなく、どれだけ中身を深めるかが重要であると私たちは社説で再三指摘してきた。しかし、論戦の舞台を衆院から参院へ移しても、改正案に対して多くの国民が感じる疑問や懸念は解消されていない。

 安倍晋三首相ら政府は「国際組織犯罪防止条約締結のために改正案の成立が必要だ」「東京五輪に向けたテロ対策になる」と説明するが、対象犯罪はどう考えてもテロとは結びつかない著作権法違反など幅広い。条約はマフィアなどの経済犯罪防止が目的で、現行法でも締結可能との指摘もある。

 改正案の「組織的犯罪集団」「準備行為」の定義は明確でなく、成立すれば恣意(しい)的な捜査にお墨付きを与えかねない。市民に対する監視が強まる恐れも拭えない。

 金田勝年法相は相変わらず曖昧な答弁を繰り返している。官僚任せにする場面も目立つ。質問と答弁がかみ合わない質疑でいくら時間稼ぎをしても、その累計に一体どんな意味があるというのか。

 こんな審議状態で時間がきたから採決ということなら、「良識の府」「再考の府」という参院の看板が泣く。審議30時間を理由に採決を強行した衆院と同じでいいのか。参院の存在意義、二院制の意味を改めて問い直してほしい。

 政府、与党は改正案の成立を確実にするため、短期間の会期延長も検討しているという。審議はおざなりでも、法案成立へ向け延長や強行を辞さない-そんな姿勢では議会制民主主義は成立しない。審議を尽くし、疑問や懸念がどうしても解けないなら、政府に出直しを求めるのが参院の役割だ。


=2017/06/13付 西日本新聞朝刊=

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