「共謀罪」施行へ 捜査への監視こそ必要だ

 実際に犯した罪を罰する「既遂罪」を原則とした刑事法体系から、大きく踏み出す懸念は強い。

 犯罪を計画段階で処罰する共謀罪の趣旨を盛り込んだ「テロ等準備罪」が改正組織犯罪処罰法で新設された。近く施行される。

 刑法の未遂罪や予備罪よりさらに前の段階の「準備行為」を取り締まる。恣意(しい)的な解釈や運用を許さないためにも裁判所のチェックなど厳格な運用を強く求めたい。

 改正法の対象となる「組織的犯罪集団」とは、重大な犯罪を目的に作られた「継続的な結合体」とされ、政府は一般市民は含まないとしている。

 では、警察は捜査対象が犯罪集団であることや、準備行為の有無をどんな方法で認定するのか。情報を収集するしかない。組織内部からの通報や密告も含まれよう。

 とりわけ捜査当局が着目しているとされるのは、警察が電話を傍受できる通信傍受法である。政府は、テロ等準備罪は同法の適用外とする一方、将来同罪にも拡大する可能性を否定していない。

 電話の傍受は通信の秘密を侵す恐れがあるため、歯止めとして裁判所から傍受令状を受けなければならない。それでも法務省によると、一昨年傍受した約1万4千回の通話のうち3分の2近くは犯罪と無関係な内容だった。

 テロ等準備罪の対象犯罪は、特許法や著作権法などテロとは直接関連性のないものを含む277に及ぶ。改正法施行でこれまで以上に幅広い情報収集が迫られる。

 裁判所には厳格な令状審査を求めたい。最高裁によると、逮捕や傍受などの全令状請求の却下率は2015年度でわずか0・008%にすぎなかった。

 捜査の対象は既遂の犯罪ではないため自白偏重も懸念される。取り調べの可視化(録音・録画)は不可欠だ。可視化は相次ぐ冤罪(えんざい)事件の反省から始まった。

 「共謀罪」反対論の背景には、捜査当局に対する国民の不信があることを忘れてはならない。警察による市民監視が常態化するようなら民主主義の根幹は揺らぐ。


=2017/06/17付 西日本新聞朝刊=

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