改憲加速化表明 安倍首相はなぜ急ぐのか

 憲法改正は安倍晋三首相の「悲願」だが、それにしても前のめり過ぎないか。政局を優先したとしか思えない急ピッチの進め方には危うさが漂う。

 首相は改憲について「来るべき臨時国会が終わる前に、衆参の憲法審査会で自民党案を提出したい」と講演会で述べ、秋の臨時国会に向けて党内論議の加速化を表明した。首相は5月3日の憲法記念日にも、改正憲法の2020年施行や「本丸」とされる9条改正を目指す意向を示したばかりだ。アクセルの踏みっ放しである。

 自民党の憲法改正推進本部は5月の首相発言を受けて、党原案の年内取りまとめを目標に作業を急いでいたが、さらなる前倒しを迫られた形だ。首相側近の下村博文幹事長代行は「11月上旬ぐらいに党内のコンセンサス(合意)を得る必要がある」と述べている。

 安倍政権は来年の通常国会での発議、そして60~180日後の国民投票という日程を描いているようだ。しかし、国会はもとより自民党内の論議がそこまで煮詰まっているのか疑問だ。

 衆院の憲法審査会は「天皇」「国と地方の在り方」など個別課題で各党が意見表明したり有識者の考えを聴取したりしている段階だ。参院の憲法審は先の国会では一度も開かれなかった。そんな状況での首相の「加速化」表明だ。

 なぜ急ぐのか。「森友学園」「加計(かけ)学園」を巡る疑惑、閣僚や議員の暴言・失言で内閣支持率が急落する中、改憲で国民の視線をそらそうとしていないか。そうだとすれば、本末転倒も甚だしい。

 衆院議員は来年12月が任期満了だ。安倍政権での憲法改正に前向きな「改憲勢力」が衆参両院で国会発議に必要な3分の2を確保している間に発議を終え、場合によっては国民投票と衆院選を同時に行うとの政治日程も取り沙汰されているという。

 国の最高法規である憲法の改正を政局的な理由で拙速に進めるのは、もっての外である。丁寧で慎重な国民的論議が求められるのは改めて言うまでもない。


=2017/07/01付 西日本新聞朝刊=

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