「共謀罪」施行 国民の側が運用の監視を

 一般人は本当に対象とならないのか。捜査の乱用に歯止めはかかるのか。国民の強い疑念と不安は残ったままである。

 組織犯罪を計画段階で処罰するため、共謀罪の趣旨を盛り込んだ「テロ等準備罪」を新設した改正組織犯罪処罰法が施行された。

 実際に犯した罪を罰する「既遂罪」を原則とした刑事法体系が大きく変わる。私たちはその危険性を指摘してきた。恣意(しい)的な解釈や運用を許さぬために裁判所などの厳格なチェックが必要だ。同時に国民の側こそが長い目で運用を監視していく必要がある。

 テロ等準備罪は、刑法の未遂罪や予備罪よりさらに前の段階の「準備行為」を取り締まる点が大きな特徴だ。

 具体的には2人以上の「組織的犯罪集団」が重大犯罪を「計画」し、少なくとも1人が現場の下見や資金調達など「準備行為」を行った段階で犯罪となる。例えば組織的に実行する振り込め詐欺の場合、電話をかける部屋を借りれば「準備行為」として処罰できる。

 しかし、彼らが犯罪集団かどうかは日常的に情報を収集しなければ見極めができない。政府は国会の審議で「一般人は捜査対象にならない」と強調する一方、「犯罪の疑いがあれば一般人ではない」とも答弁した。監視社会を招くとの批判が絶えないゆえんである。

 金田勝年法相は改正法を適用する場合、事件受理から裁判確定まで報告するよう全国の検察庁に大臣訓令を出したという。一つの歯止め策のつもりなのだろうが、政府内にも「法の暴走」への危惧があることの証左ではないか。

 もちろん直ちに捜査機関が権限を乱用するとは考えにくい。しかし時の経過とともに緊張感が薄れ、冤罪(えんざい)などを生む可能性は否定できない。対象犯罪は特許法や著作権法などを含め277に及ぶ。

 既に国際テロリスト財産凍結法が一昨年施行されるなど国際テロ対策は進んでいる。最近ではむしろ「一匹おおかみ型」のテロも多い。改正法の可否を含め総合的な視野から検証を重ねるべきだ。


=2017/07/13付 西日本新聞朝刊=

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